13話

レン

なんだよ、アメリかよ

アメリ

レン先輩、ラン先輩をお祓いして

レン

いや、オレには出来ないよ

アメリ

私、思い出したの。あの日の恐ろしい会話を

レン

恐ろしい?

 首を傾げたレンにアメリは伝えようとした。

 

アメリ

……っ

……

 でも間に合わなかった。

 振り返ると、黒い男が立っている。

アメリ

で、出たー

 一目散に走り去ったアメリをレンは不思議そうに見ているだけ。

レン

大丈夫か、あいつ

レン

怖くなって、おかしくなったのか

アメリ

……

 アメリは走りながら思い出していた。

 どうして、ああなったのか思い出していた。

 あの日、アメリが知ってしまったこと。
 きっとレンは知らないだろう。



 弟の前では決して見せなかったであろうランの姿をアメリは見た。

 そして、ランを追い詰めたのは彼の親友。

 あの人がトンデモナイ危険人物かもしれない。そのことを伝えたかった。

アメリ

カッターナイフは護身用よ。どうか私に力をください。

アメリ

呼び出していただきありがとうございます。私も先輩にお話があったのです。アイに近づかないでください!

ラン

俺が好きなのは君だよ。アメリちゃん

アメリ

はぁ?

ラン

いきなりで、申し訳ない。俺は今焦っているんだ

アメリ

どういうことよ、私はアイに近づくなって言ってるの

ラン

赤音には近づかない。だって俺が好きなのは君だから

アメリ

私は嫌いよ、アイが好きになる男は

ラン

このままだと同性愛者になるから、付き合ってくれっ

アメリ

男同士で良いじゃない。私とアイも女同士なんだから、問題ないわ

ラン

そういうことか。あの子が焦って俺に告白してきたのは

アメリ

どういうことよ

ラン

どうやら、君と俺の友人は同類の変態のようだな

アメリ

私は変態じゃないわ。純粋にアイを好きなの

ラン

同じだ

アメリ

同じじゃない、ふざけんじゃねぇ

ラン

そうやって、病んでる君がステキなんだ

アメリ

なにを

ラン

お願いだ! 付き合ってくれ!

ラン

……っ

アメリ

え? 先輩

アメリ

男の人を相手にするのだから護身用にって思っていた。持ってきたのはカッターナイフ。使う為ではなかったの。ただの気休め。
使う事態にはならないと思っていた。どうにかなると思っていたのね、私は。

アメリ

ハハハハハ

アメリ

まさか、ラン先輩もナイフを持っていたとは思わなかった。しかも、私に脅しをかけてくることも、予想できなかった。

アメリ

……っ

アメリ

その後は記憶にないのよね。怖くなって逃げたことは確かなコト。

 気が付くと教室の中にいた。

 ここは空き教室で普段は使わていない。

アメリ

ここは……

 
 そして、窓を開けてベランダに出る。

 ここにアメリが来たのは初めての事。

アメリ

ああ、ここだったのね

 アメリはそこから見えるものを見た。
 体育館裏が少し見える。

 アイはここで失恋のショックで泣きながらメールを打っていたんだ。

 そして、ここからアメリがランを殺すのを見てしまったのだろう。

 何故か、そんな気がした。

 普段、生徒のいない教室はここだった。


 殺してはいないのだけど。
 アイにはそう見えたのかもしれない。

 
 どんな気持ちだったのだろうか。

アメリ

ああ……

アメリ

ここから飛び降りたら死ねるだろうかしら

バカなこと言ってるなよ

 突然、声をかけられて振り返る。誰かに腕を掴まれていた。力強く掴まれている。

アメリ

レン先輩、どうしてここに

レン

兄貴の気配があったから追ってきたらさ、あんたが飛び降りようとしていたから

アメリ

 その時、アメリは自分がベランダから身を乗り出していたことに気づいた。

レン

赤音が悲しむだろ

アメリ

あの子、死んでるのに

レン

死んでる奴に余計な心配かけさせるなって

アメリ

………

アメリ

わかりました

アメリ

先輩、私は大丈夫なので引き続きアイを捜してください。私たち勝負中なんですからね

レン

おうよ

ラン

ごめんね

アメリ

ラン

どうしてもアイツに勝たせたくてさ。イタズラがすぎたみたいだ。

アメリ

ラン先輩ってお優しいのですね。初めて知りました。

ラン

アオがヤンデレホモなのは知られても構わない。だけど、俺がホモだと思われたら……死んでも死にきれないんだ。

ラン

だから、もう少しだけ追いかけっこしようか?

アメリ

え?

to be continued

pagetop