12話

レン

おかしい

 走りながらそんなことを考えていた。
 
 いつからだろう……

 物音がしない。

 アメリやアオも同じように赤音を探しているはず、 
 なのに、自分の足音しか聞こえない。

レン

うぉ

 足を滑らせた。
 
 思わず声を出して尻もちをつく。
 床にはバナナの皮があった。

レン

何だよ、コレは

アメリ

あんなのに引っかかるなんでチョロいです

レン

あん? ゴミはゴミ箱に入れろって!

アメリ

真面目かよ

ラン

……

 バナナの皮をゴミ箱に投げ捨てて周囲を見渡した。
 誰かがいる、そんな気がした。
 だがそれは赤音ではない。

 それじゃあ……

レン

兄貴、いるのか?

アメリ

へ?

ラン

……

レン

兄貴も会いに来てくれたら嬉しかったのだけど

アメリ

何を言い出すの?

レン

それはオレのワガママだな。でも、見守っているって信じてるさ

ラン

……

 そして、オレは走り出した。
 何でだろう、兄貴に背中を押されたような……そんな気がしたんだ。

オレの足はある場所に向けられていた。

花壇

 赤音アイの人生が終わった場所。

 そんな場所に居るのだろうか。

 そこに赤音の姿はなかった。

 ここに来たかったのはオレだった。

 オレは見たかったのかもしれない。

 彼女が最期に見たモノを。

 

 立ち入り禁止のテープがあった。
 
 気にせずに中に入る。

 ふと、その雑草で溢れた花壇に寝転がる。
 見上げる空を見て苦笑した。

レン

コンクリートの壁が邪魔だな

レン

駄目だな、屋上の方が綺麗だ

 オレは立ち上がる。
 そして、その場を離れた。

 アメリはレンの後を追おうとした。





 が、すぐに見失ってしまった。

アメリ

どういうことなの

 彼が階段を駆け下りたから、アメリも階段を駆け下りた…………つもりだった。


 最後の一段を降りたところで、



 また一番上に戻されるのだ。

アメリ

急がなきゃ

 やっと最後の一段をおりた。
 

アメリ

やったわ!

……

 そう思ったアメリは拳を握りガッツポーズ。

何やってるのさ

アメリ

ギャー

アオ

お、大声を上げるな

 アオが激しく後ろに跳ぶ。

アメリ

あら、アオ先輩でしたの。てっきり

アオ

てっきり?

アメリ

いえ……

 そう言って微笑むアオの表情が怖い。
 アメリは顔を強張らせた。

アオ

レンがいない内に君に伝えたいことがあるんだ

アメリ

伝えたいことって

アオ

俺の気持ち

アメリ

アオ、先輩……わ、私は

 赤らめるアオを前にするとアメリの顔も自然に赤く染まる。
 

アメリ

こんなときに、告白って何を考えてるのかしら。

アオ

なんで、君が照れるんだい? ランと話をしたときに聞かされてたはずだけど

アメリ

ラン先輩と話したときって……

アオ

ランが君に告白したとき

アメリ

………

アメリ

………

アオ

ランが焦って君に告白した理由だよ。言われなかったかい?

ラン

このままだと同性愛者になるから、付き合ってくれっ

アオ

……って

アメリ

そう、だった気がします

アオ

ランが焦った理由って、俺だよ

アメリ

え……

アオ

だから、俺は君が嫌いなんだ。カワイイ従妹を殺して、大好きな親友を殺した君のことはね

アオ

レンも言ったように君は殺してないかもしれない。たまたまランのナイフがランに刺さっただけ、たまたまアイが下に落ちただけ。

アオ

ランのナイフが君に刺さっていたかもしれない、下に落ちるのがアイではなく君だったかもしれない。あれらは不運な事故だった。

アメリ

……

アオ

君のことは殺さないよ。俺もレンと同じ意見。犯罪者じゃないからね

アメリ

……これも、貴方がやっているのね

アオ

これって?

アメリ

さっきから、変なコトばかり起こるのよ。貴方が実は超能力者で何かしてるのね

アオ

俺は何もしてないけど、何かするとすれば

アオ

ランだろうね

アメリ

……

to be continued

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