11話

出会って7日目

赤音

すごい、夜の空も綺麗です

赤音

……

 夜空を見上げて、赤音は微笑む。

レン

赤音、やりたいことって何だ?

赤音

笑わないでくださいよ

赤音

カクレンボです

赤音

隠れるのは私。皆が私を見つけてください。

レン

逆じゃないのか?

赤音

レンくん。幽霊の私が鬼さんになったら、簡単にみんなを見つけますよ。

レン

そうなのか?

赤音

隠れるのは私

赤音

私を見つけてください



 

アメリ

こんな時間にコソコソ動いて

アメリ

警備員さんに見つからないのかしら

赤音

大丈夫だよ。幽霊を舐めないで、アメリちゃん!

赤音

私とみんなの姿は誰にも見えないよ。

アメリ

レン

アオ

警備員たちは校舎内にいるの?

赤音

はい。見えると気になるだろうから、見えないようにしておきました。ちょっとだけ空間がずれてる感じかな。いつもの校舎だけど、少し違うのです。

アメリ

……

レン

……

アオ

常世と現世の境目かな。

赤音

そんな感じです!

アメリ

何を言っているのですか?

レン

オレもわからない

 

赤音

とりあえず、誰にも怒られません

赤音

張り切って、カクレンボしましょう!

アメリ

私たちの中の誰がアイを見つけるか勝負です

レン

おう

アオ

いいね。じゃあ、別々に行こうか

アメリ

夜の学校だから怖いとか言わないでくださいね

レン

言うかよ

アオ

アメリ……

アオ

気を付けてね

 ゾッとするような笑顔をアメリに向けてアオは疾走する。

アメリ

……怖くなんかありません

 そう叫びながらアメリは一年の教室に向かって走っていった。

 アメリは勝利を確信していた。

 

アメリ

アイの親友は私! だから、アイは私の前に現れてくれるはず

 突然物音がした。
 反射的に足が止まる。

アメリ

……ひゃ

……

 周囲を見渡しても、そこには何もなかった。
 おかしい、何もないはずがない。

 そこにあったものがない。
 ここは一年の教室がある廊下。
 生徒のロッカーや用具入れが並んでいるはず。

 大きなロッカーがあったはずだ。

……

アメリ

黒いの出た

 現れたのか、そこに居たのか、黒い影の男が立っていた。何をするでもなく、アメリを見下ろしている。

 走り出そうとするが、出来なかった。

アメリ

フガ

 目の前にロッカーがあったのだ。
 さっきはなかったのに。

 消えていたロッカーが現れている。
 しかも……

アメリ

開いている?

 僅かに開いていた。
 どうしてだろう、覗いてはいけないと思いながらアメリは扉に手を振れる………

……

 そこを覗くと

アメリ

何も、


ないじゃない。

アメリ

そうだわ、あの男たちを邪魔しましょう

 不敵な笑みを浮かべながらアメリは再び走り出した。

 三年の教室に向かっていたアオは席に座っていた。
 机の上には花瓶がのせられている。

 ここは親友ランの席だった。

アオ

……ラン、これで良いのかな

ラン

どうだろうな。わからないよ。

 現れた声にアオは驚かない。

アオ

無責任だな。悪いのはお前だろ……

ラン

原因はアオだ

アオ

俺の所為だなんて心外だね

ラン

どこかのヤンデレホモが全て悪い!

ラン

……とはいえ、バカなことをしたとは思う。

アオ

反省してるの? 偉いね。

ラン

原因を作ったのはお前だろう。突然、迫りやがって。男に迫られて嬉しい奴がどこにいるっ

アオ

そうだったけ?

 アオは立ち上がり、何もない虚空を睨みつける。

アオ

お前との語らいも楽しいけど……

アオ

俺たちって、カクレンボの真っ最中なんだ。お前と話している暇はないんだ。どいてくれよ

ラン

そう簡単には行かせるかよ、もう少し遊ぼうぜ

アオ

……

 突然、椅子と机が動き出した。
 
 右に左に動くそれはアオの行く手を阻んでいた。

アオ

……

 アオはその動きをじっとみつめる。そして、目を見開く。動き続ける椅子と机の隙間を縫うように駆け抜けた。

アオ

……そこか

アオ

……

ラン

さすがだな

アオ

楽しかったよ、ラン

 教室の外に出て、振り返る。

アオ

………お前と親友になれて良かった

 教室の中はもとの静寂を取り戻していた。あれほど激しく動いていた椅子も机も元の位置に納まっていた。変わっていたのはランの机の上の花瓶から花が消えていたことぐらいだろう。

to be continued

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