ユラはドアの前に立ち、
向こう側にいる相手に声を掛ける。
ユラはドアの前に立ち、
向こう側にいる相手に声を掛ける。
どちら様でしょうか?
私はエレノアと申します。
こちらに私の知り合いがいると
聞いてきたのですが。
この声はエレノアに間違いない!
オイラたちの知り合いだ!
入れてやってくれ!
それを聞くとユラは頷き、ドアを開けた。
すると室内にエレノアが入ってくる。
エレノアはタックたちを見るなり息を呑んだ。
皆さん、その怪我はっ?
まぁ、色々とありまして……。
エレノア殿こそ、
どうしてここが分かったのです?
あなた方がここにいると、
知り合いの子が
教えてくれたんです。
でもそれを伝えてきたのが
どなたなのか、
記憶がないらしくて……。
だから半信半疑だったんですけど
ほかに行方の手かがりもなくて。
ダメで元々と思って
来てみたんです。
アレス様はご無事ですか?
えぇ、大丈夫よ。
実は――
エレノアは第4の試練の洞窟で起きたことを
タックたちに説明した。
事前にトキザから四天王のうちの3人が
攻撃を仕掛けてきていたことは
タックたちも分かっている。
ただ、デリンが仲間に加わったことや
ミューリエがやられてしまったということには
さすがに驚きを隠せないでいた。
そうか、そんなことが……。
さすがアレス様。
そんな大ピンチを退けるとは。
ビセット、オイラたちも
アレスを追うぞ。
行き先はグラドニア公国だ。
そこに最後の試練の洞窟がある。
承知です!
タック様、どうかエレノアを
お連れください。
きっと役に立つことでしょう。
族長……。
エレノアよ、
ルナトピアは私やシィルに任せて
お前はタック様や勇者様を
助けて差し上げるのだ。
でも私はルナトピアの復興に
力を尽くしたいのです。
アレス様にもそれは
ご承諾いただいています。
ルナトピアを案ずる想いが
エレノアの声や仕草から滲み出ていた。
そんな彼女にロイアスは優しい笑顔を向ける。
その気持ちは嬉しい。
だが、勇者様がやられてしまったら
ルナトピアの復興どころではない。
魔族どもは勇者様を倒すため
再び卑怯な手を
使ってくるかもしれぬ。
それは……。
魔族どもの残存勢力を考えれば
ルナトピアは私たちだけでも
なんとかなるだろう。
むしろヤツらは残る力の全てを
勇者様へ向けてくるはず。
確かにルナトピアが
狙われる可能性は
低いかもしれませんね。
ルナトピアは
私たちに任せておきなさい。
…………。
エレノアは唇を噛みしめ、俯いていた。
アレスを助けたいという想いと
ルナトピアの復興に力を注ぎたいという想い。
そしてロイアスやシィルの気持ち。
それらが胸の中でひしめき合う。
どうする、エレノア?
オイラたちは
どっちでも構わないぞ?
……分かりました。
私はタック殿とビセット殿に
同行します。
この剣、アレス様のために
命尽きるまで振るう覚悟ですっ!
エレノアよ、
勇者様のことは頼んだぞ!
はいっ!
族長とシィルはルナトピアを
お願いしますっ!
任せておきなさいっ!
審判者3人で
パーティを組むことになるとは
面白い運命ですね。
あぁ、オイラは昔を思い出すよ。
タックの目にはかつての仲間たち――
聖騎士ランスと拳聖ユースの姿が
エレノアとビセットに重なって見えた。
思わず頬が緩むが、すぐに気を引き締める。
よし、グラドニアへ急ごう。
そのためにもまずは
ルナトピアへ戻って、
そこからゲートで移動だ。
承知ですっ!
はいっ!
こうしてルナトピア滅亡の危機を
辛うじて退けたタックたち。
一足先にグラドニアへ向かったアレスに
追いつくため、
タックたちはゲートへと急ぐのだった。
特別編・4
1.穏やかな ひととき
2.掴みどころのない2人
3.ルナトピアに迫る影!
4.終わらない危機
5.全滅!
6.温かさと冷たさ
7.それぞれの進む道
終わり
ご覧いただきありがとうございますっ! 設定やおおまかな流れが作ってあるのに、それを眠らせたままにしておくのももったいないかなぁと思って書いてみましたっ!