8話

出会って5日目

レン

………

 時は遡る。

 

いつものように、放課後までを屋上で過ごした。

 

 そして、赤音が現れる前に、移動する。

 これはアオから聞いた情報。

 赤音が現れるのは、
 放課後のチャイムが鳴ってから。

 だから、チャイムが鳴る前に行動する。

 オレは再度アメリを呼び出した。

 今度は体育館裏に。

アメリ

何の用ですか

 不機嫌そうなアメリをオレは睨んだ。

レン

ここがどこか、わかるだろ

 

アメリ

事故現場ですよね。誰でも知っていますよ

レン

ああ、ここで兄貴があんたに殺された

アメリ

何を言っているの?

レン

兄貴はあんたに殺されたんだ

アメリ

はぁ?

レン

ここであんたに呼び出されて殺されたんだよ

アメリ

何でそう思うの

レン

日記だ

 その単語に、アメリの表情が一変した。

アメリ

そっか~!!日記盗んだのは、あんたなのね

レン

お前の日記じゃない、
赤音の日記に書いてあったんだよ

アメリ

アイの?
私のではなくて?

 アメリは首を傾げる。

レン

あいつはSNS上で日記を書いていた。そのことは知ってるか?

アメリ

初耳です。

レン

日記は全体に公開設定されているから、アカウントさえあれば読めるだろう。そこじゃなくて、非公開設定の……下書きに書いてあったんだ。【アメリちゃんが先輩を殺した】ってな。

レン

これは、赤音の従兄弟の海野アオからの情報だ。
身内だから、どうにかして見ることが出来たのだろうな。どうやったのかはオレは知らない。

 実際のサイトを見せることはできない。削除されたら証拠がなくなってしまう。

 だから、アオが用意した写真画像を並べてみせる。

アメリ

………

アメリ

確かに神島ランを殺したのは私です

レン

………

アメリ

それで、お兄さんの仇にここで私を殺すつもりなの?

レン

今は兄貴の話じゃない

 もちろん兄貴のことも大事だが、今は横に置いておく。

レン

悪いな兄貴

レン

アオはこの下書きしか気にしてなかった。
だけど、オレは過去のものも読んだ

アメリ

デリカシーのない男ね

レン

オレもそう思った。だけど真実を知りたかったんだ。そして、オレは見つけたんだ。何度も書いてある言葉があったんだ。

【アメリちゃんはカッコイイ】って言葉が!

アメリ

……

アメリ

それが、何だって言うの

レン

信じられないだろうが、赤音アイはまだ成仏できずに校内にいるんだぜ

アメリ

はぁ?

レン

オレも信じられない。オレは赤音と会って、話もしたんだ。兄貴が死んだ後、学校休んだし、事件のニュースは観たくないからテレビも観なかった。だからオレは赤音が死んだことを知らなかった

レン

久しぶりに登校して、結局ダラダラ過ごしていた。そんな時に会って、喋った女の子が実は死んでいて幽霊だったって言われて、未だに信じられない

アメリ

バカみたい

アメリ

あんたの妄想じゃないの?

レン

確かに証拠はない。オレとアオにしか赤音は見えない

レン

だけど、赤音はオレでもアオでもないカッコイイ人を捜していた

アメリ

それはラン先輩でしょ

レン

オレもそう思った。でも違うんだ。でも、これを見たら違うってことに気づいたんだ。

 オレが見せたのは赤音のメール作成履歴とメール内容。
 アオが写真に撮って送信してきた画像だ。。

レン

送信しなかったお前宛てのメール。一つは兄貴が死んだ日、多分送信できなかったのは殺人現場を目撃してしまったから

アメリちゃん、告白しました。だけどダメでした。好きな人がいるそうです。悲しいので泣いてから帰りますね

アメリ

……

 メール作成時間を見たアメリの表情が変わる。
 それはアメリがランを呼び出していた時間なのだろう。

レン

もう一つは赤音が死んだ日。こっちは、送るべきか悩んで送らなかったってところだろう

アメリちゃん。昨日のことで話したいことがあるの。屋上なら誰も来ないから屋上で話そう

アメリ

……

 茫然とするアメリはオレは見据える。

 全てをオレとアオの自作自演と思われたらそれまでだ。これ以上はアオに来てもらって実物を突き付けるしかない。

 だけど、その時には警察もいるだろう。



 それは避けたかった。

 日記の内容を見たオレには彼女が殺人を犯すような少女には見えなかった。

 自分の心の闇をノートに殴り書きして発散していた、そう思っている。

 赤音の日記の中のアメリは。大好きな親友だったのだから。
 
 オレは赤音のSNSの日記を見せる。

 これは公開されているもの。オレのアカウントからも見ることが出来る。

赤音

今日は体育祭。やっぱりアメリちゃんが大活躍。アメリちゃんカッコイイよ。

赤音

学習旅行の班が決まった。アメリちゃんと一緒だ。自由行動の計画、みんな行きたいところバラバラで喧嘩になりそうだったけど。アメリちゃんがビシッと仲裁、計画も皆が納得できるものになった。さすがアメリちゃん。カッコイイ。

赤音

体育の授業はB組とバスケの試合だったけど完敗だった。みんな、落ち込んだけどアメリちゃんが気合いを入れてくれたから、みんな笑顔になれた。うんうんカッコイイよアメリちゃん。私たちどこまでもついていくよ。

アメリ

………

レン

赤音が屋上で会いたかったカッコイイ人はあんただ

レン

だから、屋上にいる赤音のところに来て欲しい

アメリ

アイは会って何を話したかったのよ

レン

それは、わからない。でも赤音はカッコイイ人に綺麗な青空を見せたいとか楽しそうに言ってたよ

アメリ

私に会いたいなら、会いにこればいいのに

レン

多分、赤音はあんたの前に現れているよ。
きっとあんたが彼女を見ようとしないから、見えないんだ

アメリ

……

 アメリは頭を抱えてしゃがみ込む。
 オレは静かに周囲を見渡した。

 ここで兄貴は死んだんだ。
 どうして、命を落としたのかはまだわからない。

それを問うのは今ではないだろうな。すまない兄貴。

 そこにいるような気がして苦笑する。
 見えない誰かが笑っているような気がした。

ラン

……

 自分を殺した女が嘆いているのが嬉しいのか。オレがオレらしくないことをしているからなのか。
 誰かがそこで楽し気に笑っていた。

to be continued

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