7話

出会って4日目

 アオは電話越しにため息を零した。
 今日のオレの行動について思うことがあるのだろう。

アオ

レンは無謀だな

レン

まぁな

 ランを殺したかもしれない犯人に直接会う。
 確かに無謀すぎるバカの行動だったかもしれない。オレは反省しながらもその言葉はアオには告げない。

レン

それで、何の用だ。説教ってわけじゃないだろ

アオ

アメリの日記を見て、アメリ本人と話した感想は聞かない。見て欲しいものがあるんだよ

レン

ああ

アオ

メール送りたいからアドレス教えてもらえるか?パソコンとスマホと両方ね。

レン

わかった

 オレがアドレスを告げる。
 無暗に教えるものじゃないと言われそうだが、アオは信用できる相手だ。

アオ

よし、じゃあ送るから。感想は聞かない、どうするかは任せるよ

レン

何を送るのか知らないが良いのか? オレの行動によっては、お前の意に反することになるかもしれないぞ

レン

【アメリに殺された】とアオは考えている。だけどオレは……

アオ

大丈夫。結果がどうであろうと、レンはアイの為になることをするだろうから

レン

そうかい

アオ

じゃあ切るよ

   

出会って5日目

 赤音が一人で屋上を訪れた。

赤音

こんにちは! レンくんがいない?

赤音

……

 赤音は三階の廊下を走っていた。
 誰も廊下を走っていることを咎めない。誰も赤音を見えない。

 すれ違う生徒たちは、突然風が吹いたような気がして立ち止まりキョロキョロと見渡す。
 アオは額に手を当ててそれを見ていた。

 

アオ

……

赤音

!!

アオ

……

 赤音がこっちに走ってくる。
 だからアオはそれに背を向けて早歩きを始めた。
 

アオ

……

 そして、屋上に続く階段を昇る。
 他の生徒から見れば、生徒会長は今日も不良を諫めに行くのだろうか、そう見える行動。
 
 アオがレンに接触することはおかしいことではない。親友の弟の様子を見に行く、そんな風に受け止めても貰える。
 
 誰が見ても背後から迫る幽霊少女を誘導しているとは見えない。

赤音

待ってよ、アオさん~

アオ

……

赤音

……

アオ

……

赤音

…………

アオ

で、どうしたの?

赤音

レンくんがいないんだよ、ほら

 屋上に辿り着くと赤音はそうアオに告げる。
 アオは不思議なものを見るように赤音を見ていた。

アオ

アイが捜していたのはレンだっけ?

赤音

ちがうよ、カッコイイ人だよ

アオ

じゃあどうして、レンを捜しているの?

赤音

レンくんがいないと、カッコイイ人が見つからないからだよ

 そこで、赤音は口に手を当てて何かに気づいたようだった。

赤音

もしかすると、わたしがレンくんを見えないだけ? みんなが、アメリちゃんがわたしを見えないみたいに

赤音

レンくん、わたしはここだよ

アオ

アイ、アメリのこと覚えていたんだ

赤音

もちろんだよ。でも、アメリちゃんはわたしが見えない。会いたいのに、近くにいるのに見えないみたいなんだ

アオ

アイ……そうだったね。あのノートはアイが持って来たんだよな

赤音

あのノート? わたしには読めなかったけどアオさんは読めたの?

アオ

まぁね

アオ

お前が会いたいカッコイイ人っていうのは、アメリのことじゃないか

 アオの言葉に赤音は目を見開いた。
 何かを口にしようとして、何度も閉ざす。

赤音

……

赤音

そうだ、そうだ、カッコイイアメリちゃん。会いたい、会いたい、会えない、会うのが怖い

赤音

でもアメリちゃんにちゃんと言えてないことがある。だからわたしはアメリちゃんを捜していたんだ

アオ

アイ、もしかするとアメリも同じ気持ちなのかもしれないよ

 そうアオが言う。
 

 屋上の扉が開かれた。
 
 現れたのは息を切らした少年と、少年に手を引かれた俯いたままの少女。
 
 少女は顔を上げて、虚空を見る。
 どこを見れば良いのか分からなくて視線を彷徨わせる。

アメリ

……

アメリ

アイ、そこにいるのね

レン

……

赤音

……

赤音

アメリちゃん、レン君も……良かった、二人とも見えるよ

 アメリはアイの居場所がわからないらしく戸惑っている。

 だけど声が聞こえた。
 目を見開いて、声の聞こえた方向を見やる。
 アオの隣の誰もいない空間を見る。そこにいるのだ。

to be continued

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