6話

 出会って4日目

 いつものように、仰向けに寝転がり空を見る。
 ドドドっと駆け込んでくる音に耳を傾けた。

赤音

……

 赤音だった。

赤音

うう、今日もいないか

レン

ここにいるのはオレだけだ。本当に屋上なのか?

赤音

はい、屋上です!

赤音

そういえば入学した頃なんですけど屋上には怖い魔物が出る~って噂があったのです。嘘でしたね。レンくんしかいませんね。

レン

魔物……

レン

オレか? 誰がそんな噂を……

赤音

絶対に屋上に行ったらダメだって、言われてたのです。

レン

じゃあ、どうして屋上にって約束をしたんだ?危険な場所なんだろ。

赤音

でも、わたし見たかったのです。
この青空を、あの人と

 そう言って手を広げて空を仰ぐ。

レン

それじゃ、がんばらないとな

赤音

はい

レン

今日はどこを探すんだ?

赤音

体育館裏なんてどうでしょう。呼び出しの定番です

レン

体育館裏か

 オレは息を飲んだ。
 そこは、兄貴の遺体発見現場。
 そんなところに赤音を連れて行ってはいけない気がする。
 何より、オレが近づきたくなかった。

 オレは兄貴の死を乗り越えていない。
 赤音はオレの顔色が変わったことに気づいて眉根を寄せた。

赤音

レンくんどうしたの

レン

何でもない、体育館裏はやめておこう

赤音

そうだよね、カッコイイ人が来る場所じゃないものね

 そう言うと、
 突然オレの隣に寝転がる。

レン

 寝転がって、両手を広げる、開いた掌を空にかざして笑ってみせた。

赤音

すごい、空が綺麗です

レン

だろ? オレの好きな場所だ

赤音

それじゃあ、わたしもここを好きな場所にします

赤音

そして、あの人に見せるんだ

 そう言って微笑む横顔が眩しかった。
 眩しいのに遠い。
 彼女の視線は兄貴に向けられている。
 それを知ったオレの胸はどうしてか痛かった。
 彼女の心を占める兄貴はこの世にいない。
 だけど、オレの心を占める彼女もこの世にはいない。

赤音

今日は、お昼寝しながら考えますね

レン

そうだな

 オレたちは寝転がり空を仰いだ。

 赤音と別れ帰路についたオレはポケットの紙切れを思い出した。

 アオの名前と携帯番号が書かれてある。
 オレはその番号に電話をかけた。

アオ

遅い

 不機嫌な男の声がした。

to be continued

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