2話

 出会って2日目

赤音

そういえば、貴方のお名前聞いてませんでしたね

レン

オレを知らないのかよ。有名な不良だぜ

赤音

知らないですよ、全校生徒何人いると思っているんですか。

レン

神島レン

赤音

カミシュマレン、カッコイイですね

赤音

カミシマ?……カミュシュマ……

レン

レンって呼べよ

赤音

了解です、レンくん

 そう言って微笑む赤音。

 この高校に来て初めての事だった。
 目つきの悪いオレに無邪気な笑顔を向ける女と出会うのは。

レン

二年だ。赤音は一年だよな。

赤音

ハイ

レン

先輩に向かってレン『くん』はないだろ

赤音

ごめんなさい。レンさまと呼べば良いのでしょうか。

レン

レンくん、でいい。

レン

それで、赤音。オレが手伝ってやろうか

赤音

へ?

 赤音は首を傾げる。

レン

そのカッコイイ人探し

 そう言うと赤音は目を見開いた。

 オレも何で、そんなことを言っているのかわからなかった。
 ただ、困っている彼女を助けたいと思っただけだ。

赤音

でも、カッコイイってこと以外の情報がないのですよ。あ、三年生です。

 一つ上になるな。
 オレは顎に手を当てて思案する。

レン

カッコイイの定義なんて人それぞれだろうし、顔見れば思い出せるだろ

赤音

はい

レン

とりあえず三年の教室行ってみるか

赤音

はい

レン

あ、オレって怖がられてるから話を聞くのはお前な

赤音

がんばります

 そして、オレたちは三年の教室に向かう。
 予想通り、突然現れたオレに生徒たちは驚いていた。
 先輩だというのに、どうしてこうなるのだろう。

赤音

みんな、逃げていきますね

レン

オレが怖いんだよ

赤音

レンくんが強いからですね

レン

そうかい、そうかい

 オレたちがそんな会話をしている。
 生徒たちはもの凄い形相でこちらを見やる。思わず一睨みすると一気に散り散りに逃げてしまう。

レン

あ……

 オレの手は虚空で止まったまま。
 気づけば廊下には人っ子一人いなくなっていた。

赤音

レンくん、誰もいませんよ

レン

オレの所為だ

赤音

どうしてですか? レンくんは私をここまで連れて来てくれたじゃないですか

 そう言って微笑む赤音の笑顔が眩しい。
 オレたちは連れ立って屋上へ戻った。
 その日は、それで解散。

    

出会って3日目

 翌朝、校門をくぐったオレは違和感を抱く。
 どうも、周囲の視線が痛い。
 ヒソヒソと話し声が聞こえてくる。

あんなことが、あったのだから仕方ないだろうなぁ

ついに、頭がおかしくなったのかもな

近づかない方がいいな

 知らない間にオレは頭がおかしい不良になっていた。
 赤音にも悪いことをしてしまったような気がする。
 

 オレは周囲の視線に対して鋭く睨み返した。
 たちまち、オレに向けられていた視線はスッと消えていた。
 そう、思っていた。

……

 一人だけ、オレを見ている男がいた。
 あそこは三階、三年の教室だ。
 目を凝らしてみたが、男の姿は消えていた。
 赤音はいつも通りに放課後の屋上に姿を現す。

赤音

レンくん、こんにちは

レン

すまないな、赤音

赤音

へ?

 突然、謝罪の言葉を口にしたオレに赤音はキョトンとした視線を向ける。
 あれ、オレ変なこと言っただろうか。

レン

一年の教室で噂になったりしてないのか? オレといること

赤音

そういうのはないですよ

レン

そ、そうなのか

 オレは意外だなと思った。
 オレの噂は一年まで広がっているかと思ったがそうではないのだろうか。

赤音

レンくんは何か困ってるのですか?

レン

いや、大丈夫だ。いつも通りの不良だ、怖いな~って言われるだけだよ

赤音

レンくんは怖くないです!

レン

え?

 赤音はオレの前に立つ。
 赤音の瞳は綺麗だ。見つめられたら吸い込まれそうに綺麗な瞳。純粋で無垢で穢れを知らない瞳。

赤音

レンくんだけなんです。私に手を差し伸べてくれたのは。ありがとうございます。

レン

そうか……そう言われるとオレは嬉しい

 これは本音だ。オレは恥ずかしさで赤くなっていることに気づいて目を反らす。
 赤音はそんなオレを不思議そうに見ていた、

to be continued

pagetop