俺はまだ知らなかった。

この女がどれだけ嫉妬深くて
裏の顔を持っているかってこと・・・。

さっき優くんと話してたよ、夏子
でも泣いてたから優が
関係しているんじゃないかな?

俺は元カノの言葉は俺への気遣いと
ばかり考えていた。

坂田結城

そうなのか?ありがとう
行ってくるよ。

結城は誰にも渡さないカラ

坂田結城

おい、優

神谷優

なんだ、結城さんか
どうされたんです?

坂田結城

お前・・・
夏子に何言った?

神谷優

噂の周りは本当に早いですよねえ

坂田結城

早く答えろよ

神谷優

お付き合いできないといいました。

俺には理解できなかった。
お互い好きなのになんで付き合わないのか、と。

坂田結城

なんで、付き合わないんだよ?
お前、夏子のこと好きなんだろ?
なのになんで・・・

神谷優

まず、好きだから付き合うのは
当たり前なのでしょうか。
それが全てではないと思います

神谷優

またあなたは感情に身を任せて
逃げようとしている、違いますか

僕と夏子が付き合えば自分は
傷つかなくて済む。そして、
自分は諦めることができるから、
なんて思っていませんか?

全て、的の中心を射るように
どの言葉も俺の心に突き刺さった。

神谷優

まず、僕その言葉は
屋上で言ったんですが
どなたから聞いたんですか?

坂田結城

え・・・?

神谷優

どなたかいたのかもしれませんね

どなたか、なんて分かっているはずだ。
俺の彼女しかいないだろう・・・?

でも、なんで屋上なんかに?

神谷優

お気をつけて。

優はこの時にはもう気付いていたのかもしれない

優は俺の言葉を待つこともなく、
自分の教室へと入っていった。

あっ、いた?優くん

坂田結城

お、おう・・・
ありがとな、夏子は?

一人にしてあげなよ

その言葉に何故だか背中に悪寒が走った。

坂田結城

そ、そうだな・・・

この時に優の忠告の意味を
深く考えればよかったのかもしれない。
そうすれば、母親が亡くなることは
なかったかもしれないのに・・・。

田中夏子

あ、結城・・・

坂田結城

夏子、大丈夫なのか?

田中夏子

うん、ごめんね。
もう大丈夫だから。

それより・・・ここに
女の子、通らなかった?

坂田結城

女の子?

田中夏子

そう、その子がカッター片手に
走ってて、太ももに当たって
血が出ちゃってさ・・・

坂田結城

女の子は通らなかったけど・・・

夏子が来る前に見た‘女の子‘は
俺の彼女しかいない。

坂田結城

まさか・・・な?

もっと、深く切っておけば良かった

俺の嫌な予感が当たっているなんて
思いもしなかった。

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