握りしめていたノートを放り投げると、クリスは教室を出ようとして、

センデクミィル

クリス

クリス

セン

 いつの間にか、ドアのところに立っていたセンデクミィルの姿に足を止めた。

センデクミィル

君たちの勝ちだね

 笑う。

クリス

……お前、最初からこうなるってわかってたな

センデクミィル

そうだね、これ以外に方法はないだろうなって思ってたよ

クリス

てめぇ!

 拳を固めて殴りかかろうとしたが、

センデクミィル

危ないなあ

 ひょいっと避けられた。
 そのまま、センデクミィルの姿が宙に浮かぶ。

センデクミィル

約束とおり、ここは引くよ

 そして姿を消そうとするのを、

クリス

セン!

 呼び止めた。

センデクミィル

なんだい?

クリス

覚えておけ

 人差し指を突きつける。

クリス

今はまだ、こいつには勝てない。それはわかっている。でも

クリス

俺はいつか、お前を倒して、フィリスを元に戻すっ!

センデクミィル

……へぇ

 センデクミィルの笑顔が歪む。

センデクミィル

できるものなら、やってみな

クリス

やってやるさ

センデクミィル

……楽しみにしているよ

 そうして今度こそ、その姿を消した。

クリス

フィリス!

 クリスが駆け付けた時、キリシアが水晶の塊の前でおろおろしているところだった。

キリシア

クリス、これは一体!

クリス

すみません、センセ。俺たちには、他に方法が思い浮かばなかったんです

 水晶の像は、当たり前だがフィリスの形をしていた。
 その顔が、綺麗に微笑んでいて、それに少しだけ安堵した。

クリス

信じて、くれてるんだもんな

クリス

どこか、絶対に誰にも壊されない場所に保管しないと。そこらへん、軍に頼めますか?

キリシア

え? ええ、それは

 まだうまく事態を飲み込めていなさそうな顔で、キリシアが頷く。
 それなら、あとは自分が頑張るだけだ。
 泣きそうになるのを、大きく息を吸って耐えると、

クリス

絶対に、また会おう。フィリス

 水晶の像にそっと触れると、祈るように呟いた。

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