翌日。学園の救護室で養護教員のキリシアが、クリスの頭を治療しながら呆れたように言った。
……で、たんこぶ作ったってわけね
翌日。学園の救護室で養護教員のキリシアが、クリスの頭を治療しながら呆れたように言った。
だって、こーんな分厚いの投げるのはなしでしょ、センセ
先に投げたのはクリスの方なんでしょ?
それは、あいつが変なこというから!
恋の鞘当てで喧嘩なんて、青春ねー
言いながらも左手は魔法陣を描き、
トラクターボ
呪文を唱える。
はい、できた
ありがとう、センセ
どういたしまして。君も不便ねー、これぐらい自分で治せればいいのにね
痛いところを突かれて言葉に詰まる。
この学校の養護教員なんて基本暇でしょうがないのよねー。みんな、自分で魔法で治しちゃうから
……どうせ俺は回復系苦手だよ
あらあら、落ち込んじゃった? ごめんね
言いながらキリシアは机の上から飴をとると、
はい、元気だして
子供じゃないんですが……
いらないの?
……もらっておきます
うん、いい子
微笑んで頭を撫でられた。
この人も、掴みどころないんだよなー
フィリスは学園の廊下を、足取り軽く歩いていた。
ちょっとこれは、及第点とれた気がするー!
追試の手応えがいつになくあったのだ。フィリスにしては、レベルで。
なんか悔しいけど、ちゃんとクリスにはお礼言わなくっちゃ
そう思って探しているんだけれども、なかなか姿が見えない。
あ、セン!
少し前を見知った姿が歩いているのを見て呼び止める。
フィリスさん
クリス、見なかった?
救護室ですよ
え、なんかあったの?
たんこぶができただけです。自分で治すこともできなんだから
嘲笑うようにセンが言う。
……そっか。しょうがないなー
ひとまず行ってみよう、とフィリスが歩き出すと、
フィリスさん
呼び止められた。
ん?
クリスの、どこが好きなんですか?
なっ!
真顔で問いかけられた言葉に、一瞬で身体中の血液が顔に集まったのがわかる。
なにそれっ
魔法をうまく使えない、クリスのどこが好きなんですか?
畳み掛けられる。
冷静な言い方に、少しカチンっときた。
確かに、クリスは全然魔法使えないけど。でも、その分すっごい努力しているの知っているし、優しいもん
センを少し睨むようにしてみると、嫌に冷静な瞳が見つめ返してきた。それがなんだか居心地が悪くて、
ルームメイトのこと、あんまり馬鹿にするのよくないよっ!
それだけ告げると、今度こそ救護室に向かった。