エレナ

フィリスってさー、クリスくんと付き合ってんの?

 寮の自室で、ルームメイトのエレナに言われて、

フィリス

はぁ!? 言ってんのぉっ?!

 思わず叫んだ。

エレナ

え、違うの? みんな言ってるけど?

フィリス

そんなことないよ!

フィリス

なにその、いやな感じなの。だって……

 床に転がっていたクッションをぐっと抱え込む。

フィリス

私は……好きだけど。でも、クリスいつも意地悪だし

エレナ

でも、クリスくん優しいじゃん?

フィリス

そうだけど

 普段元気のいいフィリスのおとなしい姿を見て、エレナは思わずくすりと笑う。

エレナ

やっだもー。絶対脈ありなのにー

エレナ

フィリスかわいいー

 そのまま、フィリスに抱きついた。

フィリス

ちょっとー。何それー

エレナ

んー、がんばってねー

フィリス

……うん、ありがとう

セン

結局、君はフィリスさんと付き合っているのかい?

 同じく寮の自室で、ルームメイトのセンに問われたクリスは、

クリス

はぁ? ……お前になんか関係あるのかよ

 苛立ちを隠しもせずに問い返した。

セン

質問に質問で返す男はモテない

 淡々と言葉を返される。

クリス

……俺、お前のこと本当嫌いだわ

セン

奇遇だね、僕もだよ

クリス

調子狂うんだよなー、こいつと話してると

クリス

別に付き合ってない

セン

だろうな

クリス

だろうなってなんだお前は!

セン

思ったまでを述べたまでだ。
大した魔法も使えない、君じゃフィリスさんに不釣り合いだよ

クリス

っ! なんでお前にそんなことをっ!

 自然に手が魔法陣を描こうとして、

セン

寮で魔法を使うのは規則違反だろ?

 冷静に指摘されて思いとどまった。

セン

実際、発動したかどうか怪しいしな

クリス

うるさい!

 魔法を使う代わりに、手元にあった漫画本をぶん投げた。意外にも上手い具合に顔面に当たった。

クリス

ざまぁみろ!

 勝ち誇ったところで、

セン

先に手を出したのは君だから、これは正当防衛だ

 低い声が聞こえて、分厚い魔導書が飛んできた。立て続けに数冊。

クリス

ちょっ、それは、反則っ!

 一冊受け止め損なって、後頭部にぶつかった。

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