翌日、レギュラー組が練習している隅で、勇人は一人黙々とドリブルの練習をしていた。側ではからかうように前原と取り巻きたちがへらへらと笑って見ていた。

負け犬が隅でボールごっこしてまちゅよ

誰かが聞こえよがしに言うと、わっと笑い声がこだまする。

もう黙ってられない!

彩名は今日も桜の下のベンチで読書をするふりをして様子を窺っていたが、耐えられなくなり抗議しようとしたとき、監督が前原を呼びつけた。

おい前原、ほどほどにしろよ。新人戦の一次予選はお前をキャプテンにするからな。チームをまとめろよ

キャプテンですか……

監督は前原の肩をぽんと軽く叩いた。

前原は少しして複雑な表情になり、リフティングする勇人のほうをちろっと見た。
 

 
練習帰りにとぼとぼと歩く勇人を、同じようにがっくりと肩を落とした彩名が後を追う。
 
そのとき、後方からタッタッタッと走ってくる靴音がした。





あれっ、前原くん……

おい、真田!

えっ……前原、なに?

……おまえとは小学校からコンビ組んでたよな。あの頃はアイコンタクトできてたんだよな俺たち

こんな優しい口調の前原くん、初めて見ました…
一体どうしたのでございましょう

う、うん……

お前、いつから下ばっかり向いてるようになったんだ?

………

……いつまでもグズグズ後ろ向きになってんじゃねぇよ。オウンゴールして悪いか、って、なんで言われへんねん!

前原……?

「お前がいつ開き直るか見てたんだよ」
そう前原くんが言ってるように聞こえます……

次の試合、俺がキャプテンに指名されたんだ
勇人、お前、練習に参加してもいいから、その代わり、絶対に自分の手でレギュラーつかめよ

えっ……? いいのか、練習、一緒にやっても

まぁな
お前がいないとパス出すやつおらんからな

サンキュ前原

あああああ、まるで幸村様と終生のライバルだった伊達政宗のようでございます!

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