花祭りの日から、エヴァリーンのトールに対する態度が変わった。
どこが、どのようにと問われると難しい。ただ、前よりも柔らかくなった。
詐欺令嬢と呼ばれ、社交界につまはじきにされていたお嬢様の結婚が、いよいよ現実に近づいてきた。ギャラリーは、本人たち以上に大盛り上がりだ。
トールはますます積極的に屋敷を訪れるようになった。ほぼ毎日、屋敷に顔を出しては、贈り物をくれて、他愛ない話をする。
時間があればお茶をしたり、一緒に町に出かけることもある。
愛を囁(ささや)かれ真っ赤になるエヴァリーンの姿は、最近、伯爵邸の名物のようになっていた。
トールと過ごす時間は、心地よい。
再会した日は、警戒心丸出しで、とても仲が良かった二人には見えなかった。それが、今では、手を繋ぐのも、互いに触れるのも当たり前になっていた。
まったく嫌じゃない。それどころか、楽しんでいる。エヴァリーン自身も、自分の気持ちの変化に気づいていた。
今日とて、二人は中庭で仲良くお茶をしていた。
家人は、気を利かせて、お茶の準備を終えると、そそくさ屋敷の方へ戻っていった。
お茶会もそろそろお開きという頃、トールが口を開いた。