どれくらい時間が過ぎただろう。
エヴァリーンは、ようやく目を覚ました。
辺りは、一面真っ暗闇。
ここは一体、どこ?
眠らされていたエヴァリーンには、当然見当がつくはずない。
前回はスリに捕まり、今度は監禁。それも、トールと二人で出かけた時ばかり、トラブルに巻き込まれる。
彼は疫病神(やくびょうがみ)か何かなの!
と、エヴァリーンは苛立ち気味に立ちあがった。
自分を攫(さら)った女性の顔ははっきり覚えている。トールにアプローチをしていた、あの女優たちだ。
つまり、彼がこの事件の起爆剤のようなもので。
最悪だ。人目も多い、公共の場だから、あの女性たちとの関係も、親しげな態度も、追及しなかった。それなのに、この結果だ。
いない相手への悪態を吐いても仕方ない。
エヴァリーンは、手を伸ばし、周辺を探った。
相当広い場所らしい。右へ左へ、少しずつ動いているのに、柱にも壁にも触れない。
目を細めてみても、何も見えない。分からない。
冥府の入り口のような底知れ無さを感じ、ぞっとした。
恐る恐る一歩踏み出すと、かつんという音が辺りに反響した。