えっと……三助さん?

ご名答にございます!

オマエが代わりに?

はい、お任せ下さい!

三之丈さまのピンチとあらばこの三助!

何がなんでもお助けしたく思います!!

一之臣さんと二之継さんは、少しの間考え込んでいた。

なんだ!? どうした?

次の対戦におじけづいたか狐の!!

すると、一之臣さんは突然──

選手交代だ!

はぁ? 選手交代だと~?

そうだ!

三之丈が突然、ノロイウィルスに感染した!

ステージ上で伝染るかもしれねー!

ゲホゴホ……くっ、くるじ……

そんなもの認められるワケないだろ……?

いいんですか?
このノロイウィルスは感染すると、顔が百倍に膨れ上がり、顎が6つに割れるんですよ!

なにぃっ!?

ううっ……顎が……顎がたくさんある……

……おっ恐ろしすぎる……

そんな顔になったらもう誰にもモテませんよ?

それは困っちゃうね~

し、仕方ない……認めてやる

まっ、誰が出てもほっちゃんの勝ちだしね~

…………顎が6つ……怖い……

それでは、いよいよ最終戦です! 

布袋さま対……えっ? 

はい、急遽三之丈さまが棄権なされた為~狐のお面の方~!

三之丈さまじゃないの~

ぶーぶー……

会場がザワついている。

それもそうだ、三之丈さんでは無く、よくわからない狐面さんがステージにはいるのだから……。

………………

それではアピールタイムです!!

ふんっ!
このオレ様が狐のヤツらの従者などに負けるワケなかろう!

雰囲気的には、さっきの大黒さんみたいなオレ様キャラな布袋さんだけど、それだと審査員の心を掴めない事はわかっているはず……。


どうするつもりだろう?

ス──っ……

大きく一つ深呼吸をして、



そして──

みんな、今日はボクたちの為に集まってくれてありがとー!

誰!?

キャラが見事に違いますね

アイツ……

…………二面性

ぼくはみんなの事、大好きだよ~!

ふんっ……

ヤツは好感度の為なら自らをも捨てる男……

ほっちゃんは、何気に可愛い系で人気があるんだよ~?

普段はオレ様っぽい布袋さんが、ステージの上ではまさかのこの変わり身……。


審査員の判断は……

布袋くん
可愛い

布袋くん

ギャップ可愛い!

あざといけれど

布袋くん

おっと~、これはもう三枚とも札が布袋さまに上がりました~!!

狐のお面さんのアピールを聞かずして勝負あったという事か~!?

お待ち下さい!!

みんなの視線が、一気に狐面さんに集まった。

さあ、どうぞごらんあれ……

スルりと狐面が外される。


するとそこには──

これでいかがでしょうか?



絶世の美男子がいた!

見つめられたらもうきっと逃げる事の出来ないであろう澄んだ瞳。

陶器のような肌と中性的で妖艶な魅力は、見ているだけで胸が高鳴って来る。

さぁ、これで審査をお願い致します!

狐面さま!

狐面のお方!

狐面さま結婚して!

と、いう事は……

2対1で、お稲荷さまの勝利です!!


会場は大歓声に包まれた。

まさか、三助さんがあんな美男子だったなんて……

いや、もしかして……


狐面さんたちってまさかみんなあんな感じの美形とか……?


ありえそうで怖い。

やったぞ里沙!

オレたちの勝ちだ!!

さあ、里沙は返してもらいますよ

里沙……こっちへ……

みんな……

私は一之臣さんたちの方へと駆け寄った。

くそっ、今回は負けたが次回は必ず勝つからな!

……次こそ必ず覚えてもらう

里沙ちゃ~ん、向こうが嫌になったらいつでも僕らのとこにおいで~

さて、オレ様たちはこっからライブへ突入だ!

見ると、ステージ上には他の七福神さんたちと思しき人たちと、ドラムやギターが運び込まれている。

もしかして……

今までのはライブの前座……?

私たちの事など無かったかの様な変わり身で、七福神さんたちのライブは始まった。

私は一気に脱力する。

すると、そこへ……

おやおや~、騒がしいから祭りかと思ったら違うのか~

えっ……


この声は……

いや~久しぶりだね~



私たちの目の前に突然、大きな狐が現れた。

じじい!

おじいさま!

じいちゃん……

娘、ワシを忘れてしまったか?

ああ、この姿ならどうだ?

あっ、あの時の……!?

目の前にいたのは、遠い昔に私が約束を交わした狐の神様。

さすが、大明神様というだけあって一瞬にしてその場の空気が変わる。

何の用だよ?

な~に、ワシはこの娘に用があるんだがね

私に……?

そう、オマエから奪ったものを返しに来たんだ

奪ったもの?

ここじゃあ、ちょっと騒がしすぎるのう……

そう言うと

という音をさせ、指を鳴らした。

あれ……ここは?

いつの間にか、周りは荘厳とした静かな場所になっている。

もうあの大勢の人の喧噪も、七福神さん達もいない。

おい、じじい!

なんだよ急に

おじいさま、奪ったものとはもしや……

ここ……眠くなる……

娘、ワシがオマエから奪ったものをこれから返す……

私は、狐の神様と調度向き合う形になっていた。



フワっと、大きな手が私の頭の上に置かれる。

…………

頭の中に、だんだんと何かが流し込まれて来るのがわかる。

これは……記憶……

優しく懐かしく温かい……

ああ……そうだ……私の記憶……

おいっ里沙、今日は何して遊ぶ?

この前の本の続き読んでよ……

里沙……変な虫がいた……

そうだ、小さい頃私はいつも三人と遊んでいた。

いつも元気な、一之臣さん。

しっかりものの二之継さん。

不思議な雰囲気の三之丈さん。

それで、学校では友達出来たのかよ?

ううん、まだ……

早く出来るといいね……

いいの、私にはみんながいるから!

……うん、僕らは友達

小学校に上がったばかりの頃、私は引っ込み思案で友達がなかなか出来なかった。

お父さんとお母さんは仕事が忙しく、一人っ子の私は家ではおばあちゃんと二人っきり、年の近い子も周りにはいなくて、なかなか友達も出来なかったから学校ではいつも一人。


そんな時、いつも学校帰りに立ち寄る神社で私は……。

三人といつも一緒だった……。

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