建て付けの悪い重いガラスの扉を押すと


あたかもお化け屋敷の洋館の扉を開ける時のような



「ギィーっギギギ」



と言う音が寮内に響き渡った。



ほとんどの学生達は遊びに勤しんでいるようで
寮内には殆ど気配がない。



振り返ってみても殆どの部屋の窓には灯りはともっていない。


門灯の灯りだけが辺りを照らしている。



その門灯の明かりに照らされて見える夕刊が
遊びに行って朝から帰ってきていないのを
物語っている。



読みたくもない新聞を部数稼ぎで
補助金を上から頂くためだけにただで
あるいはお金をもらって
とっているのが大方なのだろう。


そこらじゅうにチラシが散らばっている。







そんな光景を見ながら歩いていると自分の部屋だ。


窓を見てみても明かりはついていないようだ。


カーテンは持ってきてしまっているから
あかりがついていれば一目でわかるはずだが。



半ば諦めて戻ろうとすると
自分の部屋から微かな音がする。


なにやらチカチカ光っている。


青、赤、黄の極彩色が部屋から微かに漏れている。



テレビだ…





微かに聞こえるテレビの音が


"奴"の



存在をにおわせる。



まだ起きているかは定かではないが

多分部屋にいるはずだ。



と言うのも自分だから。。。




テレビをつけっぱなしにして
外出している可能性もある。




即ち賭けだ。




起きているかも…





いないかも…

もしここで失敗したら


逃げられて


その後に反撃をくらい殺されてしまう可能性も捨てきれない。




空には今にも消えてしまいそうな程欠けてしまった月が
あたかも微笑んでいる口かのように見える。。。




空も嘲るこの漆黒の闇夜の中。



この夜に実行に移すしかないのかという疑問が頭をよぎる。





そう考えているとまたあの声がみみもとで囁く。

「今しかないんだ。機を逃す気か?殺すんだ。殺してしまえ。今しかないだろ?僕…いや俺が保証する。奴は今部屋にいる。。。さぁ、行くんだ…さぁ…」

ふと、周りを見渡してみるがそこに人の姿はない。


虚しく虫の声と風で木が揺れガサガサと音を立てているだけだ…



それだけではない。



全く周りに気配という気配すら感じない。。。



しかし、目を凝らして足元を見てみると…


後ろに足跡が…




さっきまで奴が!もう一人の奴がいたに違いない!




Doppel…とは言えやはり二人ではなかったようだ。





でも…一体何人いるんだ??




そうか、これも奴の誘いなんだろう。




奴がその気ならこっちも乗ってやろうじゃないか。





いざ鎌倉。

さぁ!いくぞ。

いざ決戦の地へ…

奴の…僕の部屋へ…

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