研修を終えて、日々の業務に従事する若葉君。
それから、幾日の月日が経過したある日のお話し。

部長

え~、
今年もこの季節がやってきました!

部長

我々の支社にも、
新人が配属される事になりました!
2年連続の快挙です!

若葉

支社内でも、
公共系・産業系・金融系があるから
支社に配属されても、
ココに配属される事が
少ないらしいからなぁ~。

若葉

さぁ~、グループはどこかなぁ~?

部長

ちなみに、
今年の配属グループも2Gだから
ヨロシクね!

部長

あのグループに入れてしまって良いのか
今でも疑問が残るが、
若葉君に残業させ続けるのも
ちょっとマズいからなぁ~。
仕方ない・・・。

若葉~、お前指導係な!
俺はパス!

若葉

ちょっと、澤さん!?
何をいきなり言ってるんですか?
僕は二年目ですよ!

お前は、誰がどう見ても
二年目の仕事をしていない!
四・五年働いた先輩達より、
よっぽど働いている!
安心しろ、お前なら出来るから。
駄目なら、新田がフォローする。

若葉

それは、人が居ないから
仕事が回ってきただけですよね?
それに、
新田さんが指導係じゃないんですか?

新田

残念だけど、私は若葉君の指導係だよ!
あまり、指導出来てないけど。

それに次に入る新人さんには、
澤さんの担当しているシステムをやってもらう事になってる。

若葉君よりも担当量は、
格段に少ないけどね。

新田

会社的には、指導係は澤さんになってる。

けど、あの性格だから
キミみたいについていけるとは思えない。

だって、今度の新人は未経験だから。

プログラミングの基礎から鍛え直さないと、
現場じゃ使えないよ!

本部では、どの部署に行っても良いように
平均点の研修しかしないからね~。
それが、未経験者の文系となると・・・。

っま、フォローはするからね!

新田さんも認めたぞ!
お前、やれ!

若葉

いやぁ~、
そういう意味じゃないと思いますが・・・。

伊藤TL

プログラミング経験は、若葉も長いから
そこなら大丈夫だろう。
澤の扱いも、そこそこ上手くなってきたし。
ほかって、おこうかなぁ。

伊藤TL

澤、実際の教育を任せても良いけど
責任はお前がとるんだからなぁ~。

若葉に責任は押し付けれないぞ!

教育係は、お前だから。

それ以外は、好きにしろ!

若葉

そんなぁ~。
伊藤さんまで、
そんな事言うんですか~?

いっそ、
教育係も若葉にすれば良いじゃん!
俺だと、辞めさすかもしれんよ。

伊藤TL

お前、何十年この業界にいるんだよ。
いい加減、やれよなぁ~。

駄々こねても、
二年目に教育係の仕事をさせるのは無理!

会社から許可が出ない!

ちぇっ、頑固者め!
そんなに新人を辞めさせたいかね~?
どうなっても、知らないよ・・・。

伊藤TL

お前なぁ~!

実は・・・。

二人は転職組で、
以前も同じ会社で働いていた伊藤TLと澤。

新人が配属されるたびに、
伊藤TLが教育係をしていたらしいが
転職後のこの会社では、
TL(チームリーダ)となっている為
教育係は他のメンバーに任せないと
いけない決まりらしい。

新田よりも先輩だが、
一度も教育係を引き受けてないとの事で
上層部の会議で、強制的に決定したらしい。

少なくとも2Gメンバーは、
こうなる事くらいは、安易に予測できた。
分かっていたが仕方のない事もあるものだ!

こうして教育係となった澤だが、
当然教育はあまりせず
説明は若葉にさせるのであった。

鈴木

若葉先輩、すみません。

ここが分からなくて、
澤さんに聞いたのですが
プログラムの事は、
先輩に聞けって言われてしまいまして・・・。

若葉

あぁ~、別にいいよ。
今日は客先訪問が無いから、
時間あるしね。
どれどれ・・・。

若葉~。
何してんの~?

若葉

鈴木君が、
プログラムわかんないって。

澤さんが、僕に聞けって
言ったんじゃないんですか?

あぁ~、言ったよ。
だって、面倒じゃん!

若葉

然様ですか・・・。
その、対応中です。

そっか~。
俺、飯買ってくるから
在籍管理のページ、更新しといて。
ヨロシク~。

若葉

分かりましたよ。
やっときます。
ついでに、
こっちも(プログラミング)
澤さんが、帰ってくる前に片付けます。

出来なかったら、珈琲おごれよ!
1時間で帰ってくるからなぁ。

鈴木

この二人、仲が良いな~。
本当は澤さんから直接聞けたら、
早く終わる気がするんだけど
何故か嫌がられるんだよなぁ~。
若葉さんにも、悪いし・・・。

若葉

大丈夫ですよ。
おごりませんから。
そんな事には、なりませんよ!

さぁ~て、
食後のおごり珈琲を期待して
外出してこよ~っと。

若葉

いってらっしゃい!

鈴木

先輩、良いんですか?
あんな約束して・・・。

若葉

あっ、平気だよ!
もう、検討ついたしね~。

鈴木

そんなに簡単な事だったんですか?
2時間も悩んだのですが、
さっぱりで・・・。

若葉

試すから、ちょっと待ってね~。
その間に、
澤さんの在籍管理システム
更新しといて~!
お願いね!

鈴木

はい!

若葉

ここをこうして、
コレがアレだから、
アレをソレして、
こうしたら・・・。

鈴木

何をしているのか、
さっぱりわからない。
1年でこんな風に、
出来るようになるのかなぁ~?

若葉

鈴木君、なおったよ!
えっとね~、
コレが原因で上手く動いていなかったので
コレとアレを入れ替えて
ソレとアレを組み替えたら
動くようになったよ!
後はテストしてみて、問題無ければ
澤さんに出したら良いよ!

鈴木

先輩、ありがとうございます。
どうやって、知らない筈のシステムの
アタリ(※1)をつけたのですか?

※1:アタリとは検討の事で、ココでは
プログラムのバグが発生する要因を
検討して対応すること

若葉

あぁ~、
そのエラーメッセージの意味は分かる?

鈴木

何もないところから、
何かを使おうとしてダメだよって
メッセージですよね?

若葉

そうだね!
あってるよ。

鈴木

それは分かるんですが、
どこがダメか書いて無いんですよ!
そこが突き止められなくて・・・。

若葉

あぁ~、
それならプログラミングの経験を
積めば分かるようになるよ!

そのメッセージを出すパーツは、
だいたい決まってるから
そのパーツを探してあげて、
そこを少しずつ修正していくんだよ!

鈴木

少しずつが、分からないです。

若葉

プログラミングする為に使うパーツって
沢山あるでしょ~。

その中でも、
同じような役割をするパーツって複数あるし
組合せ方次第で、
そのパーツ以外のもを使って
同じ役割をさせれるだよ。

それを、順番に試しただけだよ~。

鈴木

そうなんですか。
そんなに種類を知らないですし、
組合せ方もわからないので
思いつきませんでした。

若葉

仕方ないよ~。
鈴木君はプログラミング経験が
浅いんだから。
そのうち分かるようになるから
焦らずソースコードを追っていくと良いよ!

鈴木

はい!
ありがとうございます。

若葉

そろそろ、僕も休憩時間にするね!
じゃ~、
あとは澤さんにヨロシクね!

鈴木

分かりました。
いってらっしゃい。

こうして、席を後にした若葉君。
鈴木君は澤さんに提出する為、
頑張ってテストを淡々とこなしていくのであった!

廊下でバッタリ会った、澤と若葉君。
会話はやはり、おごりの事だった。

あれ、若葉じゃん。
休憩してて、大丈夫なのかぁ~?
それとも、ギブアップで
珈琲買いに行くのかなぁ~?

若葉

行くわけないじゃないですか!
あっ、休憩は今からとります。

若葉

ちゃ~んと、解決しましたよ。
いま鈴木君が、テストしてる筈ですよ!

あぁ~、
珈琲楽しみにしてたのに~。
残念だなぁ~。

若葉

すみませんね。
簡単な問題だったので・・・。

因みに、あいつ
何が分かってなかったの?

若葉

エラーメッセージの内容は、
分かってるみたいです。
解決する為の引出しが少ないので、
調べるにも調べられない感じでしたよ。
アプローチも聞かれたので、
説明はしておきました。

そっか~。
やっぱり教育係やだなぁ~。
それなら、
お前の教育係のほうがマシだわ!
今から新田に言って、
変更してもらおうかな?

若葉

それって、変わった場合
完全に放置しようとしてませんか?
勘弁して下さいよ!

バレたか・・・。

せめて少しは、
プログラムの事、理解できていないと
教えるのメッチャ大変じゃん!

俺そういうの無理だし~
嫌いだし~
ムカつくし~
・・・。

若葉

鈴木君も一生懸命なんですから
そんな事言ったら、可愛そうですよ。

お前、配属初日から出来たじゃん。
普通、研修期間中に覚えないか~?

若葉

例年、文系出身者もいるので、
プログラミング系の研修は長くするそうですが
色々詰め込まれるので・・・。

JAVA、COBOL、ORACLEと
PADや設書計の書き方を半年で
社会人研修と一緒にやりますからね~。

知識が追い付かないと思いますよ・・・。

若葉

それに澤さんみたいに、
天才ばかりではないのでねぇ~。

ふぅ~ん。

まぁ、いいや。
若葉、飯行くんだろ~?
俺もそろそろ戻るわ!

若葉

はい。
行ってきます。

廊下で進捗状況を聞いて、
開発室に戻った澤。

澤の質問攻めで、
タジタジになる鈴木を
知る由もない若葉君であった。

休憩から戻ってきた時には
既に死んだ目をしている鈴木君であった。

若葉

きっと、
澤さんの癇に障る事をしたんだろうな~。

あそこまで、やられてるし・・・。
あとでちょっと、探ってみよう~!

鈴木

うぐぅ・・・。

結局のところ、理解できていない部分を
テキトーに答えたのが見透かされて
次々と質問攻めにあったらしい。

分からないと言えば、こんな事には
ならなかったのにと思う若葉であったが
鈴木君は「分かりません」と
言える状況じゃなかったのであろうと
すぐさま察したのであった。


鈴木君は、今後どうなるのか?
若葉君や澤さんとの関係はどうなるのか?
それはまた別のお話しで。

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