あれで悠真って
わかるんだ……

ピッ

悠衣

お母さん?

悠衣?

あなた、誰の携帯使ってるの?

私のスマホじゃないから、名前が出ないんだ……。

悠衣

麻里亜のスマホ、借りたの。

あら、それじゃあ、悠真が悠衣のスマホを持っているのかしら。

悠衣

うん。そうだけど……。

やっぱりさっきのは悠真だったのね。

悠衣

どういうこと?

さっき、悠衣のスマホから電話があったんだけど、多分、悠真だと思うの。

悠衣

え?

タイムマシンに乗せられた悠真から電話があった?
ヤツが言ってたことはウソか?

ちらっと柳之助を見た。

柳之助

どうしたんだ?

顔を見ただけじゃわからない……。

帰りにお砂糖買ってきてもらいたかったのよ。棚橋さんからデコポンもらったから、ジャム作ろうと思って。
それで、悠衣に電話したの。

棚橋さんは近所の人なんだけど、なんでよりによってと、少しだけ思った。

悠衣

明後日でも良い?

なんでそんなに遅くなるの?

悠衣

今日と明日、悠真と大学に泊まるから。

どうして急に言うのよ。晩御飯のしたく、もうはじめちゃってるわよ。

悠衣

ごめん。急に同好会のみんなで泊まることになって、悠真もそれに参加することになっちゃったの。

同好会の皆さんにご迷惑じゃないの?

悠衣

あー、うん。
それはないから。

あの子、人懐っこいものね。
お姉ちゃんなんだから、ちゃんと面倒見てあげなさいよ。

悠衣

わかった。大丈夫。

悠衣

たぶん……。

悠衣

お砂糖も明後日でいい?

良いわよ。デコポンはすぐに腐ったりしないし。

悠衣

それで、私に電話して、どうなったの?

さりげなく話を聞こうと思った。

それが、とってもヘンな電話だったのよね。

悠衣

ヘンって、何が?

1時間くらい前に電話したんだけど

出ないわね。

いくら待っても出ないから切ったのよ。

そしたらさっき折り返しの電話があったんだけど……。

悠真

おーーーーーーーーーーーーーー。

聞き取れないくらい小さな低い声で、ずっと音を伸ばしてるのよ。

気味が悪くなって切ったんだけど、今、考えてみと悠真だったんじゃないかって思ったのよね。

悠衣

どうして?

なんとなくなんだけど……。感じが悠真っぽい。

悠衣

お母さん、もう一回電話して、同じように折り返しの電話があったら、その音、録音してくれる?

悠衣

10分くらいでいいから。

え? いいけど?

悠衣

よろしく。

そう言って、電話を切った。

それからだいたい1時間くらい後に母からメールが来た。
添付されていたデータを麻里亜に渡す。

悠衣

音の速度を上げると悠真の声になると思う。

麻里亜

わかった。

麻里亜がパソコンで音を出す。

悠真

おーーーーーーーーーーーーーーー

小さくてよく聞き取れない。
低くて気持ち悪い声……。

悠衣

これ、ホントに悠真?

麻里亜

速度を上げるよ。

悠真

おか

悠衣

悠真の声になった……。

おそるべし、母親のカン……。

柳之助

悠真の時間はゆっくり進んでいるから、こっちに届く音が少しになってしまうんだな。

柳之助

無事でいるのがわかってよかったな。

悠衣

…………。

思いっきり柳之助を睨んだ。
でも、柳之助は顔色一つ変えなかった。

とてつもなく嫌な予感がした。

悠衣

ロボットの中、見てもいい?

栄井

あ、僕も見たいかも。

柳之助

そうだね。
ちょっと、様子を見てみようか。

栄井

いったん、回路を切るよ。

栄井さんがそそくさとロボットの後ろに行ったので、私もついて行った。

麻里亜

切れました。
いつでも開けてOKです。

悠衣

もうちょっとなんとかならなかったのかな……?

悠衣

どう見ても主人公の乗る新型ロボットに壊される悪役ロボットよね。

悠衣

栄井さんがいるから言わないけど……。

そんなことを思いながら、ロボットの裏に回った。

ロボットの扉が少しずつ開く。

悠衣

あっ!

栄井

……。

柳之助

どうした?

栄井さんの後ろから見たロボットの中に、驚いてしまった。

悠衣

寿司が落ちてる……。

柳之助

何?!

畳だけになったロボットの中に、マグロの寿司がコロンと落ちていた……。

あれで悠真ってわかるんだ……

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