アリス

それで、どう思いますか?

アキス

情報がほぼ皆無ですもんね


私達はあの書店からクレフに移動して話し合う。クレフはもちろんの事今日は定休日だったのだがゆっくりと話せる場所はここが一番だ。


あの後は本当に滑稽だった。それの一言だった。

フレイス

な、なんでお前が……

ティーチ

それはこっちのセリフ。って、そんなことはどうでもいいです

フレイス

ひっ。まっ、待って

ティーチ

問答無用!


ゴゴゴという音がつきそうなほどの形相で周囲のシャープペンシル、カッター、名刺等、とにかく先がとがっているものを浮遊させる。

そのあたりでソファーやテーブルを浮遊させないのは壊れたら大変なことになるということを知っているからだろうか。

フレイス

ストップ!制裁は一度って、うわぁ!


ヒュンとシャープペンシルが浮遊先からフレイスめがけて飛び立つ。間一髪のところで避けたフレイスはしりもちを無様につく。

フレイス

いてて……


ティーチさんの浮遊魔法の正体。それは物質に半重力を与える事。地上との半重力により物質を浮かせる。そして空気中に半重力を協力に与えれればそれは吹き飛ばされるのと同義であり真っ直ぐに飛んでいくこととなる。

ティーチ

絶対に、許さない!あなたを殴るまで

フレイス

うわっと……!

バシッ、ヒュンという音が交差する。

一瞬にしてフレイスは移動を終了する。

フレイス

俺、帰る!

ティーチ

待ちなさい!あっ、先生たちはもうこのままご帰宅していただいて結構ですから!


壮絶な追いかけっこが始まる。それを見送ったのが1時間前だ。

アキス

そういえば、フレイスさんの、能力は?

アリス

なんだと思いますか?

アキス

そうですね……


クルリンとシャープペンシルが一回回る。

アキス

瞬間移動。筋肉増量あたりかと思いましたか、それならば瞬間移動持ちなら一度室内の別の場所に移動する必要性はないですし、筋肉増量で一瞬で走るのは、部屋の構造上不可能。となると、一瞬で移動しかつ部屋の中で移動しなければいけない魔法。バビヨンですか

アリス

正解です


私は手を叩く。

バビヨンは自分の見た光景を否定したり肯定したりするもの。使用範囲は自分の見えている範囲のみ。フレイスはシャーペンが刺さるであろう未来を否定しよける未来を求めた。

ただ、シュミレートする時間がほとんどなかったため無様に転んだ。その後襲ってくる未来を考え扉を見てその場にいる自分をシュミレートして瞬間移動の出来上がりだ。

アキス

バビヨンは自分以外の生命体にはききませんもんね。そのあたりからも何となくわかりました

アリス

流石ですね

それだけ笑って告げると空っぽになったコップにお茶を入れる。これは店のものではなく個人で所有しているものだ。

アリス

にしても、どういうことだったんでしょうかね、あの2人

アキス

元から知り合いだったみたいですけど……。普通に考えると、フレイスさんをボコボコにしたという浮遊魔法使いが

アリス

ティーチさん、でしょうね

アキス

ちなみに、昔ボコボコにしたのって、いつのことなんですか?

アリス

私もすぐに聞いたわけじゃなくて浮遊魔法について話したときにたまたま聞いただけなんですよね。ですから正確な時はわからないんですけど、4年前ぐらいになると思います

アキス

となると、僕がプロデビューする少し前ぐらいですね。で、ティーチさんが25、6ですか


なんだか聞いてはいけないことを聞いてしまったような気がする。となると、ティーチ氏は、29、30に……。


ひとまず言えるのは年齢については記憶から外した方がよさそうだ。

アリス

それにしても何があったんでしょうかね?ティーチさん、仕事については厳しい人ですけど……、あそこまで激昂することはなさそうですけど

アキス

となると、フレイスのことですから女性関係でひっかけた女性のうちの一人、でしょうね

アリス

だとしたら、何があったか気になるところですね。お互い顔を忘れていたみたいで、名前でようやく気が付いたとなると付き合う以前の問題になりますよね

アキス

あー、確かに


となると恋愛関係は違う?いや、でも……それ以外で恨みを買う人でもなさそうだけど。

カランコロン

アリス

あれ?

アキス

どうかしました?

アリス

いや、扉の開閉音が。たしかお休みの看板を出していたはずなんだけど


私は不思議に思いながら扉の方へと歩いていく。

フレイス

うっ、うぅ……、アリス

アリス

キャァッ!?


目の前には完全に青ざめた顔で、それでいて冷や汗を流しているフレイスがもたれかかってくる。

アキス

アリスさん!なにがあり―――って、ふ、フレイスさん!?どうされたんですか?


私の悲鳴を聞いてやってきたアキス先生がフレイスを気遣う。

フレイス

魔法使いすぎた……。アリス、なにか飲み物

アリス

えっと、ちょっと待ってて


フレイスを近くの椅子に座らせてお茶を持ってくる。

アリス

はい

フレイス

ありがとう


ングングっと喉に通していき全て飲み終えるとともに倒れるように眠りに落ちるフレイス。

アリス

そっか、バビヨンって頭を使うし体力も使うしで色々疲れるんだっけ

アキス

……胡蝶の夢

アリス

あぁ……、確かに


夢と現実、どちらがどちらかがわからなくなるもの。転じて人生のはかなさを問うものでもあるけど、先生が呟いたのは前半での意味だろう。

アリス

ティーチさんからは逃げてきたんですね

アキス

何が彼をここまで追い詰めたのか。ティーチさんとも長い付き合いですが、いざという時の為に知っておいた方がよさそうですね

アリス

〆切的な意味で?

アキス

……〆切は一般的に二つに分けられます。目標という意味で設けられる〆切と印刷が間に合わなくなり販売できなくなるという意味での〆切。前半については本当ならある程度融通をきかせてもらえることが多いんですが、ティーチさんはきいてくれないんで

アリス

目的結構ゲスイですね

アキス

小説家なんてそんなものです


それはそれでどうかとも思ったが口には出さなかった。せっかくのお客様が逃げてしまうのはもったいない。

折角の、お客様を……。

アキス

ごほん、では、本日二度目

アキス

それにしてもこの事件……。非常に興味が踊ります

アリス

出題者側から回答者側に、ですね

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