僕は声に誘われるままに


激しく痛む頭をかかえ


姿見の前に立って鏡をみた。


さっさとなんらかわりはない…


はっ、として鏡に映るぼくの肩の後ろを見てみるが何ら変わりはない。

何も映っていない。

誰もいない。。。

ふぅっ、と一息つこうとしたら誰かがまた耳元で囁く。





「本当に誰もいないか?




ん??




「よく見てみろよ」




僕にしつこいばかりに囁き続ける。



「見ればいいんだろ!見れば!」

と半ば狂乱状態で鏡を覗こうとすると。




空気が凍り付いた。。

音が段々小さくなり…


秒針の音が消え…


心臓の音だけが響く…


嫌な予感がする…

そんな嫌な予感がしながらも僕はゆっくりと顔をあげた。





しんとした静寂




しかし鏡の中の僕は呆然とただ立っている。。

かに思えたその時…僕の目に信じがたい光景が…目に。
僕の目に

飛び込んできた

鏡の中の自分のまばたきが見える。。まばたき??
それっておかしくないか?




まばたきなんか…自分のまばたきなんか見えるはずがない!!


と鏡を見ると不気味な笑みをうかべた僕がうつっている…

僕は笑ってなんかない!


さらに鏡の中の僕はものすごくゆっくりと…


いやただ僕がゆっくりと感じているだけなのだろうか…


腕を水平にあげようと手を持ち上げてみる…




鏡の中の僕は
腕を水平にするなり
鏡から手が出てきて
僕の首に手を伸ばすと
首を締め始めた。


地の底から響くような低い声で鏡の中の僕はこう言った。

「殺してやる…消してやる…僕は二人もいらないんだ…」


遠のく意識の中


鏡の中の僕は腕に

一層

力をこめて

僕を殺そうとしているのが


見える。

僕は渾身の力を腕に込めると


近くにあった棒を握りしめ…


振りかぶり…


鏡の中の自分にむけておもいきり叩きつけた。

すると















凄まじい音を立て姿見が
砕け散った。。

飛び散った破片であちらこちらを切り…

目の前が鮮血にそまる





その時止まっていた時間が動き始めた…

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