興行が始まってから約2時間が経過した。

いよいよ今回の舞台もクライマックス。
すでにラストシーンも大詰めとなり、
もうすぐ初興行が終了となる。


フロストとのアンサンブルも
ここまでは問題なくできている。
むしろ私が引っ張ってもらっている気さえする。



短期間の練習でここまで出来るなんて、
やっぱり彼の音楽のセンスは並じゃない。

最初に会った時は
『絶対にギャフンと言わせてやる!』
なんて思っていたけど、
私はどれだけ練習をしたら
フロストの演奏に追いつけるんだろうな……。
 
 

ルドルフ

僕はこれからもずっと
キミを守る!

ルドルフ

少年は少女を抱きしめながら
叫びました。

ミリア

さぁ、いよいよラストね。

 
私は最後のシーンで演奏する曲に備えた。

そして座長の語りと
アルベルトの操る人形の動きを意識し、
演奏している曲からの
切り替えのタイミングを見計らう。
 
 

ミリア

今だっ!


  
♪♪~♪~♪~!!!
 
 

ミリア

うんっ、うまくいった!

フロスト

…………。

 
フロストも私に合わせて音を奏でている。

悔しいけど、
それを苦もなくやるところはさすがね……。
 
 

ルドルフ

こうして新時代の英雄たちは
世界の安定と平和を
勝ち取ったのでした!

ルドルフ

めでたしめでたしっ!

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
幕が閉じた途端、
拍手と歓声が広場を包み込んだ。

老若男女も職業も関係なく、
その場で劇を見てくれていた人の全てが
笑顔になっていた。


――少なくとも私にはそう見えた。
 
 

アラン

は~い、見物料はこちらに
お願いしま~すっ!

 
アランの持つ箱には
四方八方からおカネが入れられていった。

さらにアーシャが
明日の演目の書かれたチラシを配り出すと、
あちこちから手が伸びて
あっという間に減っていく。
 
 

ルドルフ

本日はありがとうこざいましたっ!
明日も同じ時間と場所で
興行を行います。
演目は『小さな勇気』です!

 
座長は明日の興行の案内を終えると、
アーシャの手伝いに回った。


でもあのペースでチラシが減っていくと
用意してある分の全てがなくなっちゃいそう。

今後は部数を多く刷らないといけないかも。
 
 

市民の少女

あのっ、感動しました。
握手してくださいっ!

ミリア

もちろんですっ!

市民の少女

お兄さんも!

フロスト

ふふっ、喜んで。

 
その後もたくさんの人が私たちに寄ってきて
握手やサインを求められた。
すごく嬉しいっ♪




こうしてサットフィルドでの初興行は
大成功に終わったのだった。


――もちろん、監視をしていた兵士さんに
きっちりと税金を取られた。
代わりに目的の1つである納税証明書を
座長は受け取っていたけどね……。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
その日の夜、
私は宿の部屋の窓から星空を見上げていた。

すると不意に宿の玄関のドアが開く音がして、
誰かが外へ出てくる。
 
 

アルベルト

…………。

フロスト

…………。

ミリア

あれ? こんな夜中に
2人でどこへ行くんだろ?

ミリア

こっそり密会だなんて、
まさかあの2人って
そういう関係だったのっ!?

ミリア

…………。

 
気になった私は、
悪いとは思いつつも尾行することにした。

気付かれないよう息を潜めて……。




しばらくして2人は賑やかな表通りから
人通りの乏しい静かな裏通りへ入った。

ちなみに2人は肩を並べて歩いているのに、
宿を出てからずっと何も会話をしていない。
 
 

ミリア

どこまで行くのかな?

 
そんなことを思っていると、
2人は建物が密集していて
見通しの悪い交差点で路地の方へ曲がった。


見失わないよう私も走って追いかけて――
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 

ミリア

きゃっ!

 
角を曲がったところで、
不意に私は両腕を掴まれた。

ビックリして思わず悲鳴を上げてしまう。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

第32幕 初興行の結果は……

facebook twitter
pagetop