兵士

おい、SP2-01

鉄格子に囲まれた窓のない暗い部屋に、男の声が響く。
声に反応して暗闇の中で何かが、ジャラジャラと音を立てて動いた。闇から出てきたのは少年。
16歳くらいだろうか。
北欧系の端正な顔立ち、白い肌に黒髪がよく映える。長い前髪の間から青とも緑とも言い難い不思議な瞳がのぞく。
何とも不釣り合いなパーツ。しかしそれさえも、少年の容姿を引き立てているように思えた。
暴力的に美しい少年の風貌は、見る者の目も心も奪う。

声をかけた見張り役の男は、闇から出てきた少年を一目見て思わず生唾を飲み込んでいた。
男は眼を逸らしながら、忌々しげに少年の両手足の枷を外す。
自由の身になった少年は、男に見向きもせず決められた動きしかしないロボットのように歩きだした。

重々しい雰囲気の廊下の突き当り。
そこには荘厳な大きな扉があった。
日本陸軍大佐、特殊作戦部隊隊長、清宮四郎の部屋だ。
少年はノックもなしにその部屋に入っていった。

四郎

ああ、よく来たね。待っていたよ

銀髪隻眼の四郎が少年を迎える。
四郎は日本陸軍を牛耳る清宮軍師の四男だ。清宮五兄弟の中で最も人当たりがよく、同時に最も冷酷だという。

四郎

日本軍には、世界で唯一の物質操作魔法士(テイマー)がいるのは、知っているな?

テイマーは物を自由に操る魔法を持った一次魔法士だ。
世界で唯一そのテイマーのみがその魔法を有していた。

四郎

そのテイマーが軍を裏切り、逃亡した。放置すれば奴の情報が他国に漏れる危険性がある。

少年は返事もしなければ何の反応も返さない。
そんな少年に構わず四郎は続ける。

四郎

幸い、我が軍にはお前がいる。奴はもう用済みだ。――殺せ。

全く動かなかった少年は、四郎が話し終わるや否や、四郎に背中を向けた。
座っていた四郎が立ち上がり、少年の元へ歩み寄る。
そして少年のうなじに手をかざすと、首から小さなチップが出てきた。
四郎がそれを引き出した途端、少年の体が軽くなる。少年の視界には白い文字が浮かび上がった。

魔法制御オートスタート
魔法起動式スタンバイ

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