そんな俺達が、その神殿なる場所についたのは夕方頃だったわけですが、その場所ではとても見知った人物が仁王立ちでいました。

ユニ

か、母さん、何故ここに

ユニの母

何故? ユニ、貴方が逃げるからここに来ることになったのでしょう?


母の姿に俺はとても怯えました。

そしてレイトも、

レイトの母

レイト、まさか貴方まで逃げるなんてね

レイト

で、でも僕は女体化した友人はちょっと……


けれど俺達の母親は、俺達を見て二人揃ってため息を付いて、

ユニの母

そんなことを言っていても、母さん、ユニが自分で恋人を作れそうにないことだって知っているの

ユニ

そ、そんなことはありません

レイトの母

レイトも、全然彼女が出来ないしね。
しかもそこのユニと一緒にいつもいて遊んでいるし、だったら丁度いいんじゃない?

レイト

いやいやいやいや

ユニ

いやいやいやいや


俺達は必死になって首を振っているとそこでマリーが、

マリー

そちらの話は後にしていただけませんか?
とりあえずは装置を起動させられるかを試しますので

ユニの母

あら、恋人がいるユニでなくていいの?

マリー

実は先ほどご子息の力を見させていただく機会がありましたが、なかなかのものでした。
ですので試しに今の状態ではどうかを見ることになったのです

ユニの母

あら、そうなの?

マリー

はい。
それにお二方、すでに気になる女性がいらっしゃるらしいですよ?

この時俺は、よくやった、マリーと思った。

嘘ではあるけれど、これでしばらくは俺が女体化させられる事に猶予があるのではと思った。

だがこの時、俺は見てしまったのだ。

意味深に笑うフィリアの姿を。

次は何をさせられるんだろうと思っているとそこで、

フィリア

では早速試しましょう


フィリアがそういったのだった。


母親たちは別の場所で待機らしい。

とりあえずは俺達はその謎の装置の方に向かったわけですがそこで俺はマリーに、

ユニ

ありがとうございます。
これで女体化への道が少し何とかなりそうです

マリー

うふふ、本当にお礼なんて言っていいのかしら

ユニ

な、何か企んでいるんですか?

マリー

さあね~。
ただ、私はそこにいるレイト君がちょっと気になるからつまみ食いをしようかなと

レイト

ごふっ


それまで全く関係ないというような涼しげな顔をしていたレイトが吹き出した。

そしてすぐに青い顔になりマリーに、

レイト

今までそんな素振りありませんでしたよね?

マリー

ん? そうかしら。
ああ、仕事が優先だから、私。
初めて見た時にゲットしておこうとは決めていたけれど、それがどうかしたの?

レイト

……


レイトが珍しく絶望したような顔で俺を見た。

だから俺は、今回は人事だったので微笑み、

ユニ

頑張れよ

レイト

裏切り者がぁああ

ユニ

くくく、今までの俺の気持ちがわかったか

レイト

ぼ、僕は清楚でおとなしい女の子が好きで、間違っても腹黒は嫌だぁああああ


と騒ぎ出したレイトを俺は今までの仕返しとばかりにからかって優越感に浸っていると、どこか涙目なレイトが俺に、

レイト

覚えていろ。
次はお前の番だ

ユニ

ふ、攻めれる機会は逃さない主義なのだよ、レイト君

レイト

ユニのくせに生意気な!

ユニ

何だと、レイトのくせに生意気な!

レイト

むむむむむ

ユニ

むむむむむ


そう呻きながら俺達が睨み合っているとそこでマリーが、

マリー

そこ、遊んでないで中に入って。
ここがあのドワーフの装置がある場所です


一つの部屋に、マリーは案内したのだった。

そこにあったのは大きなぐるりとしたわっかの連なった道具のようなものだった。

はっきり言って、なんだこれと思いはしたが、そこでマリーに促されてその輪のような装置に俺は触れて特殊能力を使う。

道具が薄っすらと白く輝く。と、

マリー

あー、これでもう多分大丈夫ですね

ユニ

そうなのか?
じゃあ恋人探しはそこまで急がなくてもいいな

あっさりとすぐに恋人を探さなくても大丈夫になった俺。

一安心だとレイトと一緒に頷いているとそこでフィリアが道具に近づき、

フィリア

それでこれを操作するの?

マリー

うん、というわけでフィリア、よろしく

マリーがフィリアにそうお願いをする。


途端に妙な気配が漂い、それと同時にフィリアが面倒そうに謎の道具のいろいろな箇所にふれていく。そして、

フィリア

これで最後っと


軽く中心部らしい場所に触れる。

同時にその場所から石板に光が走って……。

小さな音を立てて透明な宝石のようなものが現れる。

フィリア

あら、魔力の結晶ね。
上手くいったのかしら

マリー

そうみたいですね。
とりあえずは一つ。
これから更に効率化させてもう少し沢山出せるようにしないと

フィリア

うーん、出力を変えられるみたいよ?

マリー

! 多ければ多いほうがいいから、フィリア、そうして

マリーがそうせかして、フィリアが何かをやって、それと同時に先程よりも大量の魔力の結晶が現れたのだった。

それから、現れた魔力の結晶の回収や、フィリアに使い方をおそわったりしに来る人達が大量に現れたりといろいろ大変だった。

殆どがフィリアに行っていたので俺とレイトは端でジュースを飲んだりしていた。

ちょっとしたサンドイッチのような軽食もあったのでお腹が空いていた俺達は、それを食べつつずっと様子を夜遅くまで見ているだけだった。

ただ離れていても声は聞こえるものだ。

それによるとどうやらこの装置を使うのを敵対勢力が何故邪魔していたのかというと、起動させるのを自分達の手柄にしたかったらしい。

以前、マリーがちらりといっていた通りであるらしい。

だが、その割には俺やフィリアの力が必要なのに強力な不意打ちの攻撃を魔法でしてきた気がする。

そういった姑息なことを考える相手だったから、後先考えずにそのような行動に出たのかもしれない。

とりあえずは俺の女体化に関わる一連の出来事は、無事、問題の先送りという形だけれど何とかなったようだ。

母親達も仕方がないわねといっていたが……どちらも諦めていない様に俺には見えた。

また、レイトの見解も同様だった。

そこで、ようやくフィリアは彼らから開放されたようで俺の側に来て、

フィリア

下僕、何か飲み物をちょうだい

ユニ

はいはい


とりあえずはオレンジジュースを渡すと、一気に飲み干してしまう。

フィリアは説明が大変だったのだろうと思っているとそこで、

フィリア

これでとりあえずは全部おしまい。
今日はここに泊めてもらえるそうよ

ユニ

そうなのですか。
確かにこれから宿を探すのは大変かな

フィリア

そうね、宿代が浮いたわ。
それにこうなったこと、私も両親に伝えて来ないと

ユニ

そういえば、フィリアも逃げてきたんでしたっけ

フィリア

ええ。
でも両親にはすでに事情はお話済みらしいから、多少はゆっくりしていても大丈夫だけれどね


フィリアがそう言ってそこで言葉を切る。

次にフィリアは俺を見て、

フィリア

……明日、朝にちょっとお願いがありのだけれど

ユニ

? 何ですか?

フィリア

丁度窓から見えるそこの庭の、白いベンチのある場所があるでしょう?
あそこに、朝、6時に一人できて

ユニ

いいですが、どうしたのですか?

フィリア

言ったら逃げそうだから言わないわ

ユニ

……

フィリア

冗談よ。
それじゃあ約束よ。
私はもう部屋で寝るわ


一方的にそう言って、フィリアはその部屋に向かっていってしまう。

そして俺達も疲れたし、もうそろそろ部屋に行こうと思って、ようやく開放されたらしいマリーに場所を聞いたのだった。

19、謎の道具を起動させてみた

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