辛い時も苦しいときも一緒だよ

俺はどれだけその言葉に苦しめられて
空しい思いをしただろう。
そして夏子はどれだけの涙を流してきただろう。

そんな誘いをするのは俺の幼馴染の夏子だ。
この頃の夏子は今の杏子に非常によく似ていた。

俺は目を擦り、夏子に一人で行くように勧めた。

とだけ言うと、夏子は転入生まっしぐらで
話しかけていた。

それから、夏子が戻ってくることはなく
五限目開始ぎりぎりになって漸く戻ってきた。

俺はひどく後悔した。
そして嬉しそうに話す夏子の姿を見て、
少しだけ嫉妬した。

いつかそいつが夏子の隣に並ぶのではないか
という不安が頭を過った。
だから、明日は夏子について行くと心から誓った

しかし、それは不可能となる。

俺は運悪く三十八度の熱を出してしまった。
本当に運が悪い。
もしかしたら、優ってやつと夏子が・・・。
そんなことを考えているうちに意識を手放した。

優。俺が一番警戒している名前を
夏子の口から聞く度に俺の心はモヤッとする。

この頃の優は髪の毛もきちっとセットされていて
言葉遣いも丁寧で優等生キャラだった。

でも、猫を被っているなんて知る由もなかった。

俺は子供みたいに明らかに敵意むき出しなのに
対して、大人ぶったように微笑んだ。

相手にされていない、そんな風に感じて
無性に腹が立った。

母親のような台詞を言うと部屋から出ていった。

優は、夏子が出ていったのを確認してから
俺の方へ距離を縮め、近くの椅子に腰を掛けた。