ドアが開かれ、入ってきたのは
すっかり存在を忘れていた優だった。
俺の女。
ドアが開かれ、入ってきたのは
すっかり存在を忘れていた優だった。
は・・・?何言ってるの
杏が照れ屋だから、
中々言い出せなくて・・・
ね?杏
話を合わせろと言わんばかりの口調で
私へ無言の圧力をかけてくる。
何、考えてるんだよ
そうなんだね・・・
明らかにテンションが下がったように
目を伏せる少女をよそに
私は、ちらりと結城の方を見た。
・・・。
なんで・・・
何も言わないんだろう。
なんかやっぱりおかしいや・・・私
うん、そうだよ
私たち付き合ってるの
咄嗟に出た言葉は私の本当の気持ち
蓋をするための嘘。
こんなの私、最低じゃん。
夏子さんの気持ち、知ってるのに。
そうだったんだ?
知らなかったよ。
ごめんな、邪魔して
行こうぜ、夏子。な?
そうだね!
お邪魔だもんね、私たち。
明らかに無理して笑ってるように見える。
わざと大きな声で言っているのかもしれないが
語尾が微かに震えている。
夏子さんは泣きそうなのかもしれない。
ねえ、どういうつもり?
あんたあの子の気持ち
知ってるんでしょ?
だったら、何?
少なくとも貴方に責められる権利はないですよね。あなたも嘘を吐いたんだから。
私も最低ね
僕のせいだけにして
自分だけ逃げるつもりだったんなら
大人なのに汚いですね。
いや、大人だから汚いんでしょうか
でも、なんで咄嗟に嘘ついたんですか
嘘に理由っていりますか?
隠したいことがあるから
嘘を吐くんでしょ?
隠したいこと?
夏子の気持ちに
応えられないってことです
でも、直接言ってしまったら
あの性格ですから
結構引きずっちゃうタイプですし
隠したい事、か。
自分はなんで嘘を吐いたんだろう
ヤキモチを妬かせたかったから
違いますか?
ヤキモチ?誰に?
そんなことも分からないんですか
結城に決まってるでしょう
なんで、あの人に
ヤキモチ妬かせたくなるんですか
鈍感なあなたに質問します。
三秒以内に応えてください。
分かりましたか?
え!三秒!?
心の準備もできないまま、話が進んでいく
一問目。
一番に思いつく異性は?
そんな・・・
結城じゃないですか?
結城だったなんて言えやしない。
優くんの言った通り。つまり図星だ。
なんでそんなこと
聞くんですか?
二問目。
その人の傍にいたいですか?
守りたい、これは
傍にいたいという内に入るのだろうか?
守りたい、とは思います。
三問目。
恋愛感情はありますか?
恋愛、感情・・・・
進めない理由があるんですか
なんでこんなにも私の心が読めるのだろう。
凄いという驚きより
怖いという恐怖心の方が勝る。
もしや、エスパー・・・!
貴方の表情が
分かりやすいからですよ
それで、恋愛感情はあるんですか?
あるわけないじゃないですか
大人を舐めないでください
一応、俺も大人ですよ?
まだ子供みたいなもんです!
でも、年下を舐めてたらいけませんよ
そんなの分かってるよ
これは、過去に年下と
何かあったな・・・?
恋愛感情なんて・・・
それぞれ複雑な事情を抱えながら、
杏子は歩み出すことができるかな・・・?
ごめんね、いつも
いつものことじゃん
それぞれ重い過去を抱えながら。