依然ひとの目を見ることに気持ちの壁を抱えていたが、コーラルは村の女衆のなかに徐々に溶けこんでいった。
彼女たちは素直に赤い目を珍しい、と評したが、珍しいだけではすぐ飽きる。
関心はコーラルの赤い目ではなく、貴族の出自について向けられるようになっていった。
貴族の暮らしについて、年若い娘たちはことあるごとに聞きたがった。
童話のような、夢物語に似た暮らしを貴族が送っているもの、という先入観があるようだ。
コーラルとしても夢のある話をしてやりたかったが、部屋に閉じこもり続けていた身だ、きらびやかな逸話を披露してやれない。