家に着いた。
僕も圭も、荷物を置いて財布だけポケットに。
家に入った瞬間、
家に着いた。
僕も圭も、荷物を置いて財布だけポケットに。
家に入った瞬間、
この部屋もだいぶ、
快の匂いがしてきたね
と、言われた。
僕の匂いってなんだ?
などと哲学的な悩みを抱きつつ、部屋を出る。
どんな小物を買うの?
キッチン用品があんまり揃ってないんだ。
百均で揃えようと思ってな
ちゃんとしたお店で揃えればいいのに
お前と違って貧乏なのをわかってくれ……
言ってくれたら俺が買うよ
そういう問題じゃない
歩いて15分ほどすれば、
ショッピングモールが見えてくる。
映画やボーリング場などの”ほしい”施設がないのは悲しいけど、
百均や家電量販店、ホームセンター、本屋、サイクルショップ等は出揃っている。
そろそろ着くな
疲れたか?
全然
……そうだろうな
圭は顔がいいだけでなく、
勉強も一人より出来る、
だけでもなく、
運動神経だって抜群だ。
こんな細い身体のどこに、
この運動能力を支える筋肉があるんだろう……。
……着いた。ここだ
大きい
ここら一帯では一番大きい施設。
目立つ為、迷うことはないだろう。
自動ドアが開き、一歩踏み込む。
お目当ての百均は三階にあるので、
エレベーターでさっさと向かう。
……
……
二人しかいないエレベーター。
特に話す内容もなく沈黙が流れる。
チンッ
二階に着いたことを知らせる音と共に、
扉が開く。
と、そこには。
あっ
あっ
……
今日初めて出会った人の中で、
最もインパクトが大きい人と、再会した。
え、えっと……
ドアガシマリマス
あっ乗りますっ!
閉まりかけのドアに飛び乗った彼女、
春野 有希(はるの ゆき)さんは、
恭しく僕らは見る。
三階で、平気ですか?
はいっ
こうして、
やや重くなった空気で上がるエレベーターは、
体感時間を果てしないものにした。
そしてその沈黙をなんとか破ろうと思ったのか、
春野さんが口を開いた。
あの……
なんでしょう?
お二人は本当に、付き合っているんですか?
……
……
……何を言っているんだこの人……。
急にすみませんっ
私、春野有希という者でしてっ
その……
遂に空気を読んだエレベーターがドアを開け、
お目当ての三階へ。
最初にするべきことは、
キッチン用品の購入ではなく、
この人に真実を説明することのようだ。
僭越ながら……
日浦さんに一目惚れを、
してしまいまして……。
……唐突過ぎる告白。
雰囲気もなにもない。
圭は当たり前のようにスルーをした。
僕はエレベーターから一歩踏み出し、
必死に言葉を捻り出す。
……
そ、そうですか。
二つ分かったことがある。
この人は恋愛なれをしていないこと。
そして、
だってさ、圭
快、早く行こう
僕がわりと、
この人の――春野有希さんの告白に、
ショックを受けていたことだ。
あれ、
早いペースで先に歩いていってしまった圭を追いかけ、僕も急いだ。
春野さんはといえば、
ま、待ってくださいっ
完璧なスルーを決め込まれたのにもかかわらず、
大したダメージを受けた様子もなく、
頬を上気させて僕らの後を追いかけてくる。
まくよ
えっ、おいちょっと、圭!
待ってくださぁーい!
圭に手を引かれながら、
慣れないショッピングモールを早歩き。
後ろからは今日知り合ったばかりの女子。
軽く買い物をするだけのつもりだったのに……
どうしてこうなった……