翌日の朝、
私はアルベルトやアーシャと一緒に宿を出た。

そしてメインストリートの交差点へ
着いたところで
チラシ配りの準備を始める。


私はアコーディオンの音のチェック、
アルベルトは人形の準備、
アーシャは鞄の中から
適度な枚数のチラシを取り出して手に持った。
 
 

ミリア

じゃ、街の中を回って行こっかっ!

アーシャ

はい。

アルベルト

楽しげな曲を頼むぞ。

ミリア

分かってるって♪

 
楽しげな曲ということであれば、
やっぱり行進曲だろうな。
それもテンポが速めで変化のあるやつ!

うんっ、今回は旅人行進曲を演奏しようっ♪



――陽気に、楽しげに!

それを心がけて演奏に入る。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
~♪♪~♪~♪♪♪~!!!
 

 
 
 
 
 

市民のお嬢様

っ?

市民の青年

おっ!?

市民の少女

わ……っ!

おじいさん

ほぉ?

 
曲の演奏を始めた途端、
町の人々の目が私たちの方に集まった。

最初は驚いていた感じが強かったけど、
すぐに頬が緩んでいく。


それを見計らい、
アルベルトは小さく咳払いをしてから
ニッコリと満面の笑み!
 
 

アルベルト

本日の夕方から中央広場にて、
ルドルフ一座がサットフィルドでの
初興行をおこないま~す!

アルベルト

楽しい楽しい人形劇ですよ~!

 
張り上げた声が周りの建物に反響した。

すると少し離れた場所にいた人たちも
足を止めてこちらを振り向く。



こんなに注目されると、
私の演奏にも気合いが入るってもんよ!

例え同じ曲でも演奏者の違いや
演奏する時の気分によって
伝わり方や受ける印象は大きく違うもんねっ!


みんなに楽しい気分が伝わりますようにっ!!
 
 
 
 
 
 
 
 

 
♪♪♪~♪~♪♪♪♪≡!!!
 

 
 
 
 
 

アルベルト

皆様お誘い合わせの上、
どうぞお集まりくださ~いっ!

ミリア

うふふっ、アルベルトったら
真面目すぎて捻りがないなぁ。
やっぱり口上は
座長には適わないかっ♪

ミリア

お代は皆様次第で~す。
つまらなければいりませんよ~!

ミリア

その代わり、
お楽しみいただけたなら
破産しない程度に
たくさん弾んでくださいね~っ?

市民の女の子

あはははっ!

 
周りからハッキリとした笑い声が聞こえてくる。


私たちはゆっくりと歩き始め、
アーシャは町の人たちにチラシを配っていった。

アルベルトは私たちの列の先頭に立ち、
劇で使う人形を操っている。
 
 

アルベルト

皆様のお越しを
お待ちしておりますっ!

 
アルベルトはそう言いながら、
人形にお辞儀をさせた。

するとそれを見た子どもたちは
目を輝かせながら
こちらを指差してはしゃいでいる。
 
 

ミリア

やってて良かったな……。

 
みんなの笑顔を見られた瞬間に、
いつも私は一座で興行をしていて
良かったなぁって思う。

疲れとか苦労とか、
そんなのどこかへ吹っ飛んじゃう!
 
 

使用人の娘

あはははっ!

エルフの少女

うふふふっ!

 
私たちから広がっていく笑顔――。


みんなさっきまですごく暗かったのに
今は大人も子どもも笑顔になっている。

兵士さんたちもわずかだけど表情が緩み、
横目で私たちの方を見ている。
仕事中だからあまり表立って笑えないもんね。



もしかしたら、
この町にはあまり娯楽がなかったのかも。

だとしたら、計画なんて関係なしに
見に来てほしいなぁ。
そして楽しんでいってほしい……。
 
 

市民のお姉さん

私にもチラシをもらえる?

アーシャ

はい、どうぞ。

 
今や私たちに寄ってきて、
自らチラシを受け取ってくれる人も出てきた。

この調子だと
チラシが足りなくなるんじゃないかって
心配までしなければならないかも。


そんな矢先、道ばたに立っていた兵士さんが
怖い顔をして近寄ってくる。
 
 

警備の兵士

……キミたち!

ミリア

はい?

警備の兵士

その……私にも1枚……
チラシをもらえないか?

 
チラチラと辺りを気にしながら
小声で話しかけてきた兵士さん。

怒られるのかと思って緊張しちゃったけど
それは取り越し苦労だったみたい。
 
 

ミリア

1枚と言わず、何枚か差し上げます。
ぜひ仲間の兵士さんにも
渡してあげてくださいっ♪

警備の兵士

……ありがとう。

 
その後も行く先々で
町の人たちに笑顔を伝えることができた。
私たちのチラシ配りは大成功だっ!


――これでお膳立ては出来たっ!


でもフロストの計画も大切だけど、
私は町の人たちに人形劇を楽しんで
笑顔になってほしい。

そのあと、私たちが伯爵の悪政を取り除いて
さらに笑顔を広げるんだ!



チラシ配りを通じて、
私はそう強く感じたのだった。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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