耳元で、チャプチャプと水の音がする。

ほのかに香る潮の香り。よく響くカモメの鳴き声。

ジリジリと照りつけてくる太陽。

そして遠くの方からは、時折チャプンと魚が水面から飛び跳ねる音も聞こえてくる。

そんな夏真っ盛りの海の上、一隻の、人一人がやっと乗れるかという貧相な船の上に、一人の青年が寝ころんでいた。

やがて、青年はゆっくりと起き上がる。

れんり

......

れんり

えっと......どういう状況だ?これは。

少年は、辺りを見回す。

右を見た。海しかない。

左を見た。海しかない。

れんり

......

そして少年は、うんうん、と頷き、息を吸い、叫ぶ。

れんり

一体どういう状況だよ!? これは!!

まぁ、叫んでしまうのも無理はない。

なんせ周りには、広大な海原以外何もなく、加えて食料、飲料、船旅に必要と思われる全ての物が無いのだ。

やはり、叫んでしまうのは仕方のない事だ。

れんり

はぁ、はぁ、はぁ......

れんり

とりあえず、今の状況を整理しよう。

れんり

俺の名前は島宮蓮利。16歳。榊島に夏桜を見に行こうと定期便に乗り、部屋で就寝した。

れんり

そして目が覚めたらこの小さな船に乗り、海を漂流していた。

れんり

......

れんり

やっぱり意味分からない!!

やばい、更に分からなくなってしまった。

うるさいですよ、蓮利。

れんり

え?

突然割り込んで来た女性に、驚く蓮利。

ちなみにその女性は、蓮利と同じような船に一人で乗っていた。

れんり

......なんだ、夕音か

あっさりと真顔に戻る蓮利。

どうやら知り合いらしく、呼び捨てで彼女の名前を呼ぶ。

夕音だけじゃないよ?

そうだぜ、蓮利。

れんり

え?

蓮利が、声のした方を見ると、さっきまでは海原しかなかったのに、そこに蓮利が乗っている船と同じような船に乗った、少年少女がいた。

みゆ

おはよう......かな?蓮利君

はるま

よっす!蓮利!

れんり

美優!それに春馬も!

蓮利は笑顔を浮かべると、彼女たちに笑いかける。

みゆ

ちなみに、彼女は浅上美優。蓮利の......言わば彼女だ。

はるま

そして彼は、三浦春馬。蓮利の、そして美優の親友である。

蓮利。それより、挨拶しなくて良いのですか?

れんり

挨拶?誰に?

みゆ

......

はるま

......

......

......

れんり

え、えっと?ど、どうしたんだ? 皆。

蓮利の言葉に、呆れたような......いや、怒ったような表情を浮かべる3人。

みゆ

もう! なんで忘れちゃうの? 蓮利君!!

れんり

す、すいません......

見ると、どうやら相当怒っているらしく、少し怖い。

はるま

仕方ない。なら1から話すとしましょうか。蓮利の為に。

そうですね、そうしましょう。

そして、彼女たちは蓮利に、今までの出来事を語り始めた。

では私たちも、その話の`中`に、入り込むとしましょうか。

これは、覚めない夢のお話。

そして、覚めても`事実`になる、夢のお話。

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