ふいっと顔を背けたセニングはピッと小さい指で彼らを指した。
み、見返りとか求めてるわけじゃないから
まぁ別にいいっちけど
ふいっと顔を背けたセニングはピッと小さい指で彼らを指した。
助けたいんだろ?
うん!
なら、まずあんたをこの夢に確定させなきゃならないっち
わかってる。
まだ私は彼に認識されてないから
そのためにこの不安定な夢の世界に、君の世界を創造するっち
目を閉じ真っ暗になった視界。
私はそこに、自分の世界を創造する。想像する。
まずは空を
真っ白な雲が穏やかに浮かぶ何処までも広く青い空。
そして、地面を
自分を支えるように大きく強い地面
それらをだんだんと広く広げていくんだっち
小さかった世界がだんだんと大きく、広くなる。
もういいっちよ
あれ?
もっと青々とした感じを想像したつもりだったのに。
肩にいたのがセニングだったからかな。
プッ、随分とあいつの趣味丸出しなコスチュームだっちね
っ、ほっといて
さっきまでと違って派手なコスチュームを身にまとっているのを笑われた。
格好のことでセニングには笑われたくない……。
ほら、とっとと行くっち
わかってるっ
目の前ではまだお兄さんに何か言われているらしく踞って腕で顔をおおっている空野君。
一歩一歩歩き始めると足元の草からカサカサと音がする。
空野君……
……誰?
私、眠井
カサッ
近づくなっ!!
その場からまた一歩踏み出したとたん、伏せていた顔をバッと上げた空野君は泣きそうな声で叫んだ。
その声に怯んで後ろへ下がると彼はスッとその場で立ち上がり、私に鋭い目を向ける。
兄さん兄さん兄さん兄さんっ、誰も俺のことなんか見てないっ!!
……っ!
悲鳴のような声に耳の奥が痛み、頭の中まで大きく振動し響いているような感覚に自然と眉間が寄る。
愛されたかったっ!!母さんに、父さんに、あの子にっ!!
耳を塞いでこの雑音のような声を遮りたかったが、たぶんこの声は彼の思いなんだ。
思いが強くて強くて強すぎて、こんな喉も心も枯れそうな声で叫び続けてるんだ。
良いよ、私が聞いてあげる。
受け止めてあげる。
慰めてあげる。
私なんかでもできることがあるなら。
いつだって愛されてるのは俺じゃないっ!!
空野君だって皆に好かれてるじゃん
あんなの嘘だっ!!
いつも周りに人がいる
俺が一緒にいて都合が良いからだろっ!!
そんなんじゃ、ないんじゃない?
違う違う違う違うっ!
思いが強すぎて私の声が届いてない。
俺なんて要らないっ!!
空野君……
だけど、俺だけなんて酷いだろ……
皆消えろよ……
……っ
ぶわっと吹いた風に思い切り髪がなびいた。
痛いほどの風に身体ごと飛ばされてしまいそうだ。
俺を愛さない奴等なんて消えろっ!!
もう、駄目なのかな……。
空間が揺れるほどの思いに打たれ負けそうになったとき。
……ぽたっ