私には、やらねばならぬことがあった。
大命があったはずだ。
しかし、それを思い出すことができない。
まるで、波が記憶を流し去ってしまったかのように――――
私には、やらねばならぬことがあった。
大命があったはずだ。
しかし、それを思い出すことができない。
まるで、波が記憶を流し去ってしまったかのように――――
みず……みずお…………
……………………
みずお…………
うん
みずお…………
分かった
みず…………
分かったから
お兄ちゃん、様子はどう?
うん、ひとつ興味深いことが分かったよ
それは?
彼の名前は「水男」だということだ!
水男……?
間違いないだろう。何より、彼自身が何度も何度もそう言っているんだ
お水欲しがっているようにしか見えないけど……?
みず……みずお…………
どこからどう見ても、「私は水男です」と言っているように見えるが?
私お水持ってくるね!
若奈よ……無視はよくないぞ
う……うーん
ここは…………?
目が覚めると、そこは知らない部屋だった。
部屋全体から木の匂いがする。
どうやら、少なくとも自分の知っている部屋ではないらしい。
私は…………どれくらい眠っていたんだ?
呟いてみても、答えは返ってこない。
この部屋には自分しかいないのだから
そう、自分しか…………
………………………………
わああああぁぁぁぁ!!!!
…………いた。
見慣れぬ服を着た男が、部屋の隅からこちらをじっと見ていた。
一瞬、本気で霊か何かだと思った。
…………傷ついたぞ
驚くに決まっているだろう!誰もいないと思っていた部屋の隅からこちらを見る目が浮かんでいたら!!
しかも、部屋が真っ暗だったのもあり、こっちからは目が浮いているようにしか見えない。
おはよう、よく眠れたか?水男
みずお……?
先ほどからずっとみずおと言っていたではないか
断じて違う!!
……………………
その「マジで!?」みたいな顔を止めろ!!
では、名は何と言うのだ?
私は……誇り高き魔法使い
ソール・グルナディエだ!!
……………………うん
なんだその反応は
略してみずおでいいかな?
どこをどう略した!!
あまり騒がないでもらえないだろうか。若奈が……妹が隣で眠っているんだ
誰のせいだと思っているんだ…………
しかし、もうひと眠りしようにも目覚めたばかりで眠気が全くないな
では、私が話し相手になってやろう。私も眠くないのでな
助かる