あれがチナトゥの木…
もっと立派な大木をイメージしていたか?
…うん、まあ
安心しろ。必ずシンは助かる
うん
さあ、シンの身体を木の根元に
…
…くっ……うぅ…
シン、大丈夫か!?
慌てるな。
今、苦しんでいるのは、スルトウの魂だ
ぐぅ…っ……
チナトゥの木がスルトウの魂を吸い取っていく。もうしばらくだ
ぐわぁぁああっ!
シン…。…しっかりしろ
高……円寺くん…
よかった…!目を覚ました…
…
しばらく、寝かせておくといい。チナトゥの木がシンの身体を癒してくれる
……
ところで高円寺。君に会わせたい人がいるのだが
え?
少し待ってなさい。呼んでくるから
…?
こんなところに人なんているのか…?
…
コロック遅いな…
え…。なんでチナトゥの木が光って…
!?
まさか!
コロック! 一体何を…
しばしの別れだ。元気でな…
コロックー!
眩しい…
向こうから人が…。誰が…
え…
…コウジ
母…さん…?
…ごめんね。ずっとそばにいてあげたかった
…寂しい思いをさせてしまった
あなたが僕の…
…
…謝らないで、母さん
…?
寂しくなんかなかったよ。
いや、ちょっとは寂しかったけど
コウジ…
こっちの世界はみんないい人ばかりだ
そりゃたまには嫌なこともあるけど、それ以上にいいこともたくさんあるんだ。だから
そう。…よかった
…一緒に帰ろうよ
…
それはできないの
なんで…
こちらの世界に長く居すぎたわ
そっか…
会えてよかったよ…。母さん…
私も
また会えるよね
きっと
コロックからの伝言よ。
案内なしでも帰れるか?って
コロック…
じゃあコロックに母さんから伝えといて
いつまでも子供扱いしないでくれって
ふふふ。伝えとく
じゃあね
またね
また会えるさ
シンと2人で、もと来た道を戻る。
『行きはヨイヨイ、帰りは怖い』なんていうが、
この旅に関しては真逆で、
長くも怖くも感じなかった。
本当に怖いのは、扉の向こうだ。
僕らはそのことをなるだけ考えないで
扉を目指して歩き続けた。
そして、ついに。
シン…。覚悟はいいかい?
ああ…
まあ、大丈夫さ。博士だってどうなるかはわからないって言ってたし
うん
それに君と僕の帰りをずっと待ってるって
博士は嘘をつかない。きっと
じゃあ開けるよ
なんで…
…何も……ない…
そんな…
これじゃ、あっちの世界の方がマシだ…
博士…。ナミコさん……
…
僕らはしばらく立ち尽くした。
どこかでこうなるとは分かっていたが、
実際目の前にすると受け入れがたいものだった。
少し歩いてみたが、人間の痕跡はおろか、
虫や植物さえも見当たらなかった。
シン…
なんだい
一旦扉の向こうに戻らないか?
あんだけ脱出したがっていた異次元に、もう一度戻りたいと思うことになるとはね
向こうに戻った方が何かがあるはず
何かが…
あってもらわなきゃ困る。こんな終わり方……
扉の向こうに戻ったところで…
高円寺くん!ちょっと!
どうしたんだい
さっきは背中を向けてて気付かなかったけど、ほら!
ドアに張り紙…?
3回ノックして
大きな声で「ただいま」。
それから扉を開くこと。
僕らは君たちを
いつまでも待っている。
本間マコト
…!?
本間博士が…?
高円寺くん!
博士は僕らのことを待っているって言ってた
博士を信じよう!
た だ い ま !
高円寺くーん!!
ナミコさん…!?ちょ、苦しい…
やった!成功だ!
やったわ!マコトさん!
やっぱあなたは天才
もっと褒めて褒めて
これは一体…
あの扉の先は異次元の世界だった
つまりあの扉は異次元へと繋がるワームホールだったというわけだ
はあ…
あの扉を使えば自在に時空間を飛び越えることができる。
使えるのは能力者に限られはするが
言いたいことがよくわからないんですが…
時空を超えることができる、すなわち
すなわち?
扉の向こう、行き先を過去に設定すれば、時間を遡れるということだ
!?
タイムトラベル…
そう! 高円寺くんが扉の向こうに旅立ったあと、私は扉の研究を進めた。そして、同時にタイムトラベルの研究も
博士、そんなこともできるんですか…?
忘れたか?私の研究所は
『マジガチリアル“物理”研究所』だぞ?
タイムトラベルは物理学の範疇だ
もともと扉を見つけた当初から、タイムトラベルへの利用は頭にあったのだが、あまりに非現実的だと封じ込めていたんだ
だが、友人のピンチとあってはそんなことは言ってられん。研究を急いだよ
ありがとう、博士
うまくいってよかった
完成まで結構な時間がかかりましたけどね
…6年か。すまん。ちょっと時間がかかりすぎた
6年じゃ、そんなに変わらないでしょ。世界は
そんなことはないぞ
パパー!!
パパ…?
私の娘だ
はあ?
6年だぞ。私が結婚して、子供ができていても、おかしくなかろう
結婚!?誰と?
…
えええ!?
ナミコさんと博士が!?
まあSとMでお似合いだけど
それにもう1人、お腹に
人が異次元さまよってるときに、やることやってんな
うるさい
それで、名前をつけてくれないか
私たちの大切な赤ちゃんに
…
僕がつけていいの?
もちろん
じゃあ
『※ちなみに超能力者・高円寺コウジはガチの能力者です。』