それは、遠いとおい記憶。
母が死んだその日。
父は母の死に顔を見にこようともしなかった。
次の日。泣きわめくあたしを侍女が必死になだめている間、父は一度もあたしのもとを訪れなかった。
葬儀の日。父は正室であった母の葬儀を開こうともしてくれず、母の故郷の親族が開いてくれた。
次の日。後処理に急き立てられながら、父の訪れを待った。
その次の日。あたしは訪れてくれない父にあて、自ら手紙を送った。
また次の日。父からの返事はなかった。
次も、次の日も。
そのまた次の日も父からの便りはなく、痺れを切らしたあたしは、自ら父のもとを訪れた。
あたしを止めようとする侍女を振り切って部屋に入ったあたしは、自らの父の情事を見てしまった。
母が死んで間もないのに、他の女と…。
呆然とするあたしを見て、父は侍女に言った。