今日も居眠りせずに無事に学校を終え、家に帰る。
今日も居眠りせずに無事に学校を終え、家に帰る。
いつもは迫ってくる夕日の気配を感じながら一人で下校するのだが、
いやあ、帰宅部の気持ちってこんな感じかー
駿、ユギが怒るから、一人で先に帰ってよ
横っ面を熱い西日に照らされ、重い自転車を押しながら、テスト期間で部活のなくなった双子にまとわりつかれている。
双子はこれから更に電車に乗って帰らなければならないのだし、来週からテストなんだから早く帰れと言いたい。
だが、帰宅した後に自転車のことを言わなければならないな、とか、明日の登下校のことも相談しなければならないな、とか、考えることは山のようにあり、双子に構っている時間がない。
あ、たぶんここよ、ここ
自宅近くの神社の鳥居が見えてきた時だ。
足を止めて振り返ると、環が小道の方を覗いていた。
双子が手招きするので自転車を置いて少し引き返す。環が指しているのは、木彫りの自転車の絵が外板にはまっただけの、ただの倉庫のように見えた。
しかしよくよく目を凝らすと、曇ったガラス戸の向こうに自転車が並べられているのがわかる。
ここら辺に住んでる友達も時々使ってる自転車屋なんだって。ちょっとわかりにくい所にあるけど。ユギ、知らなそうだから
……
あーナルホド。だから環が、今日はユギと帰るとか言い出したのか
ユギと合流しても、どうも約束なんてしてなさそうだし、お兄ちゃん、とうとう環がストーカーになったのかって心配しちゃった
……駿、帰ったら千本ノックね
お、お手柔らかに~
いや、テスト勉強しろよ。
そんな突っ込みも出ないくらい、別の感情が口からこみ上げてきそうだった。
……環
何?
助かった
!
環の驚いた表情に、何故かみるみるうちに赤みが差してきたその時、
わー、良かったねー環。
でもお兄ちゃんかゆいー
と、(皐矢には意味不明の言葉で)環を茶化した佐伯は、
三連コンボでKOした。