この町に隠された真実を
ようやく知ることができる!
私とアーシャはおばあさんに注目した。
そして固唾を呑んで話に耳を傾ける。
この町に隠された真実を
ようやく知ることができる!
私とアーシャはおばあさんに注目した。
そして固唾を呑んで話に耳を傾ける。
この町ではね、
あらゆるモノに高い税金が
かかっているのさ。
税金ですか?
あぁ、そうさ。
だから本来ならもっと安く
品物を売れるんだけどねぇ。
でも旅の途中に立ち寄った場所では
そんなのありませんでしたよ?
当然さ。その税金は
この町で独自にかけられている
ものだからね。
えぇっ?
でもサイユ王国では
各領地で勝手に税や税率を
定めてはならないはずですが?
そうよね。
王国内では統一されているはずよ。
法律で決まっているもの。
国によっては各領地で自由に税金を定めて
徴収が出来るというところもある。
でもサイユ王国ではそれが認められていない。
詳しい事情は知らないけど、
よく考えてみると理由はなんとなく分かる。
だって税金がバラバラだと
領地間の格差が大きくなっちゃうから。
税金が安い土地へ人やモノが移動するのは
当然だもん。
そういえば、
こういう話はアルベルトが詳しかったっけ。
なぜか政治に関しては特に博識なんだよね。
この場にいたら、
分かりやすく説明してくれただろうなぁ……。
バサール伯爵は、
その法律を守っていないのさ。
多く徴収した分は自分の懐に
入れているわけさね。
そんな……。
金銭に関しては清廉潔白な人だと
聞いていたのに。
それは表の顔さ。
真実を知ればそれも納得だけどね。
領地で市民から搾り取っていれば
賄賂を受け取る必要がないだろう?
確かに……。
あいつはとんでもない悪党さ!
おばあさんはすごく憤慨していた。
今の話が本当なら
怒るのも無理はないけどね……。
本当にバサール伯爵が
不法な税を徴収しているのか、
真相を確かめる必要があるかも――。
伯爵がこの町を治めるようになった
3年前に導入されてね。
『幸福税』って税金さ。
幸福なのは伯爵様だけだよ。
あの、だったら町を逃げ出せば
いいんじゃないですか?
それが出来るなら
とっくにしているさ……。
おばあさんは深いため息をついた。
ただでさえ深いシワが、
さらに深くなったような感じさえする。
するとその直後、
アーシャは納得したような顔をした。
……なるほど、
町の出入りが厳しい理由が
分かりました。
市民を逃がさないためですね?
あっ、そっか!
それともうひとつ。
この事実を外に漏らさないように
するためさ。
でも出入りをしている人は
いますよね?
その人から情報が
流れちゃいませんか?
っ!?
待ってください、ミリアさん!
ちょっとおかしいです!
おかしいって何が?
町がそんなことに
なっているのなら、
噂くらいあってもいいはずです。
でも私たちは今までにそうした話を
全く聞きませんでした。
確かにっ!
ふむ、そっちのお嬢さんの方が
鋭いようだね。
う……。
おばあさんは微笑みながら
アーシャへ視線を向けた。
はうぅ、その通りです……。
鈍感な私は何も言えません……。
町の外へ出るのは非常に難しい。
余程の理由がない限り許されない。
出られるのは選ばれた者だけさ。
しかも出る際には条件が付く。
条件ですか?
……人質を取られるんだよ。
家族や友人などをね。
人質ッ!?
もし町のことを話せば人質は処刑。
もちろん、外へ出る際には
見張りも同行するからね。
言えるわけがないんだよ。
それなら旅人は?
全員が町に入ったままってことは
ないですよね?
町を出る際に自白させる魔法で
ことの子細を知っているかどうか
確認させられる。
何も知らなければ出られるんだよ。
なるほど……。
それでさっき私たちに
知らない方がいいと
言ったわけですね?
その通り……。
もうあんたたちは
知ってしまったからね。
町を出られないだろうよ。
そういう事情が
あったわけですか……。
おばあさん、教えてくれて
ありがとうございますっ!
詳細がよく分かりましたっ!!
私は清々しい気分でおばあさんに頭を下げた。
なんだか胸のつかえが取れたようで心地いい。
自然と笑みも浮かんでくる。
するとおばあさんは目を丸くして私を見た。
本当に後悔していないのかい?
当然ですよ。
最初に覚悟は出来ているって
言ったじゃないですか。
知りたいと望んで聞いたんです。
おかしな子だね、あんた。
これから税に苦しむ生活が
待っているというのに。
そうとは限りませんよ。
未来なんて誰にも分かりません。
だからいくらでも自分で
作り上げていけるんです。
それに『最後まで諦めるな』って
有名な勇者様が
言い残していますから。
英雄譚『優しき勇者』の
一節ですね?
その通りっ!
小さく頬を緩めているアーシャに向かって
私は元気よく返事をした。
そして顔を見合わせてお互いに大きく相好を崩す。
不安が全くないと言ったらウソになるけど、
なんとかなるんじゃないかという気持ちが
私の胸の中にあった。
少なくとも悲壮感みたいなものはない。
するとその直後、
おばあさんも穏やかな笑みを浮かべる。
……不思議だねぇ。
お嬢さんの言葉を聞いていると
説得力があるように感じるよ。
その明るさとポジティブさ、
まるでお日様のようだね。
そうですか?
何か困ったことがあったら
またおいで。
出来る限り力になってあげるよ。
ありがとうございますっ!
私は満面に笑みを浮かべて返事をした。
――町の人たちのためにも、
この事態をなんとかしなきゃっ!
次回へ続く!