予想通りの返事が返ってきて、俺はたじろいだ。

―－誰、なんて。
一番訊きたいのは俺の方だ。

あの公園で出逢ってから、ここに無理矢理ついて来られるまで、彼女は自分のことを話そうとはしなかったし。

と、とりあえずさっき知った情報を出しておいた。

はいアウト―。

俺には無理だ。もう無理。
俺は、正直に話すことにした。

そう言った瞬間、静かになる一同。

それを破ったのは響一さんだ。
普通の顔してそう訊いてくる。

…なんてことを訊いてくるんだ、この人は。
こんなだからいろいろと叩かれるんだよ！

ちーがーいーまーすーッ
　
なんでそんな風なことしか考えつかないんだ。
　
俺は決心して口を開いた。
本当のことを言うしかない。

俺が押し黙ると、響一さんは怪訝そうな顔をして訊いてきた。

拾う、って…
　
響一さんは信じられないという顔をしている。
　
まあ、そうなんだけど。
俺自身信じられない状況なんだけど。

…そんな顔しなくたっていいじゃないか。
自分だって初めて会った女の人を部屋に連れ込んでるじゃないか～！

…本当、響一さんには言われたくない。
　
…これは、なんなんだろう？
ツッコミ待ちなのかな？
　
響一さんはそろそろ落ち着いてきたあの人から体を離して言った。

キャラとか言わないでほしい。
女の人苦手なの本当だし。
　
さっきこの人に強く言えなかったのもそのせいだ。

そんな中、将さんがあの人にタオルを渡している。
いつの間に！

将さんは素直にタオルを受け取り、髪を拭いているあの人に話しかける。

俺と将さんの声が重なる。

…うわぁ、まじかこの人！もう少し気使おうよ。

そう俺が思っている間に、将さんの表情が変わる。
…あ、これはやばいかもしれない。

将さんにはダメだ。
この人、そういうのに弱いから。
困ってる人放っておけない人だから！

野良猫拾いすぎて部屋一個猫の部屋にしちゃった人だからー！！

そう言って振り返った将さんの顔に、響一さんと俺は、嫌な予感を感じた。

ダメだ、本当、そういうのダメ！！

ただ、ここで反対なんてしたら、確実に俺らが悪者だ。

将さんは感情移入しきったのか（いや、絶対あの芹奈って人はそんなことないんだろうけど）、涙まで浮かべている。

そして、その顔のまま俺らに言ってきた。

響一さんは笑顔のまま俺の方を向いた。

覚悟はしていたものの、その時のダメージは相当のものであったと…後で俺は高木さんに話すことになる。