昔のことを考えながら歩いていると、人にぶつかってしまった。
俺は慌ててぶつかった相手に謝った。
その相手、つまり中年の眼鏡をかけたサラリーマンが、俺のことを不審そうに見ている。
瞬間、なぜだろうと思ったが、彼の持っている傘を見て、自分がずぶぬれになっていることに気がついた。
ずいぶん長い間濡れていたようだ。
髪は濡れそぼり、体も冷え切っているらしく、指先の感覚がない。
俺は、慌てて外していたフードをかぶり走った。
どこか雨をしのげるところへ入ろう。
ファミレスか喫茶店、と考えて、俺は自分が財布もケータイも持たずに飛び出してきたことを思い出した。
これは困る。雨風を凌ぐ方法はなにかないだろうか。
しばらく走ると、人気のない公園に出た。
俺はしばらく、ひとりになりたかったのだ。