♪Q

古ぼけた窓辺に揺れてた 名も無い日々の残した記憶
干涸びた憂いは無視した 忘れるよりも遠ざけるように

淡い期待募っていく 形も見えない明日まで
続いてくレールに  見とれていたのはなぜ?
痛いくらい空っぽの 高鳴る心が答えなら
青い迷いだって 無駄じゃないかな? きっと

ねぇ、思いは伝わらなくてさ  それでも誰かを求める矛盾
ねぇ、確かなものなど無くてさ 諦めばかり目に映るけど

淡い期待募っていく 形も見えない明日まで
未来さえスル―して 辿り着けるかな?
痛いくらい空っぽの 高鳴る心が答えなら
浅い願いだって 無駄じゃないかな? きっと

淡い期待募っていく 形も見えない明日まで
続いてくレールに  見とれていたのはなぜ?
痛いくらい空っぽの 高鳴る心が答えなら
青い迷いだって 無駄じゃないかな? きっと

ホール内に響く歓声。

それはまるで、空から降ってきているかのようで、俺は震えた。
 

このホールは初めてで、ライブを行うのもまだ3回めだ。

それでもやはり、緊張よりも興奮や、爽快感といったものの方が大きかった。

このバンドの基盤であるリズムを作る、それがドラムである俺の仕事だ。


俺はすぐ目の前で演奏している仲間を見つめた。
 

みんなの視線が集まるのは、中央で歌っているひとりの青年の許である。


長身痩躯の美しい青年は、ただそこにいるだけで圧倒的な存在感を示していた。


彼は――初瀬響一(はせきょういち)は、天才だ。


彼は俺達Eternal Bloomのほとんどの曲を作っていたが、それらの曲はどれも独創的、それでいて誰の心をも捉えた。


彼の歌声は、切ないバラードからハードなロックナンバーまで、どんな曲にもあってしまう。


彼の才能はそれだけではない。
バンド名と同じEternal Bloomというファッションブランドのデザイナー兼モデルを務めており、若い世代に人気らしい。

近頃はじめた絵の方も、なかなかの評判だそう。


誰もが、彼に惹きつけられる。
そう、彼は天才なのだ。
誰もが彼に魅入られる。

俺も、そのうちのひとりだ。
 

俺は、そうずっと。
この人とこのバンドで演奏したかった――
 

曲が終わる。それとともにライブも終わる。
だがすぐにアンコールがあるだろう。


それはともかく、ひとまずは終わった。

俺はちゃんと、自分の役目を果たせていただろうか?
 

俺は、目をつむってため息をついた。

1.「園山廉の拾ったもの」(1)

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