思わず口に出してしまい、わたしは恥ずかしくなった。

顔を背ける。
どんな反応をされるのか見たくなかったというのもあるけど、これ以上のことを受け入れたくないというのもあった。
 
恥ずかしい。
やはりわたしに嘘などというものは向いていないのだ。

はじめは、彼を受け入れるつもりだった。

蓮の動きがはっきりと掴めない今、この政略結婚だけが蓮と夢をつなぐ唯一のものだった。


だから、騒ぎを起こすことなく、いたって平和に、この結婚を受け入れようと思った。

わたしはまだ若い。父上のように経験もない。
わたしがむやみに戦を続けても、勝てるかわからなかった。

指揮官である父が死に、多くの兵の命を失い、軍も万全の体制ではない。

時機を待つ必要があった。
つまりこれは、ただの時間稼ぎにすぎない。
 

それなのにどうだ。
女を捨て、国のために国を導く主導者になることを決めた。
そのためならどんな切り札だって使うつもりでいた。

…好いた男などいない。
誰かひとりの男と人生を共にする、そんなこと今まで考えたこともなかった。


誰かと人生を共にするとしたら、わたしは迷わず戴輝を選ぶだろう。

生まれる前からずっと共にいた片割れだ。
わたしはあいつがいればそれだけでいい。
男女の情などわたしにはわからない。

ならば、別に政治のために好きでもない男と結婚したとしても構わない。
 

そう思っていたはずなのに、いざその時になると、わたしは彼を受け入れるのを拒んだ。

こんなみっともない下手な嘘までついて、わたしは彼を拒んでいる。

なにかを割り切れずにいる。
…所詮は、わたしも女なのか。
 

静かに反応を待っていると、なにかがおなかのあたりでうごめいているのを感じた。

奏多

…だから、どうしたというのです?

見ると、袴の紐が解かれている。

そのまま袴を下げられ、ひんやりとした夜の空気を直接肌で感じた。

春乃

…なっ…!

怒りからか恥ずかしさからか、顔に血が上るのを感じた。

奏多

心に思う方がいたとして、それがどうしたというのですか?

小袖の合わせが開かれ、肌が零れる。

わたしはなんとか抗おうとしたものの、拘束された手はちっとも動かない。

わたしは自分の上にまたがる男を見つめた。
彼は、ひどく冷たい目をしてわたしのことを見下ろしていた。

奏多

私達は政略結婚です。こうなることも予測できたでしょう?

…ひどいことをされているのはわたしの方なのに、彼がつらそうな顔をしているのはなぜだろう?
 
笑っているのに、目が今にも泣きだしそうだ。
戸惑っているうちに、彼の片手はいたずらに動き始める。

春乃

ぃやっ…

初めての感覚に、ただただ嫌悪感から肌が粟立った。

奏多

抵抗しても無駄です。あなたの力では私にはかなわない。

嫌なのに、嫌だと叫ぶのに彼は手を止めない。
やがてわたしは、意識を手放すことになる。

その直前、交わされたくちづけはあまくやさしいもので――、最後には、わたしは抵抗をやめすべてを受け入れていた。

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