思わず口に出してしまい、わたしは恥ずかしくなった。
顔を背ける。
どんな反応をされるのか見たくなかったというのもあるけど、これ以上のことを受け入れたくないというのもあった。
恥ずかしい。
やはりわたしに嘘などというものは向いていないのだ。
はじめは、彼を受け入れるつもりだった。
蓮の動きがはっきりと掴めない今、この政略結婚だけが蓮と夢をつなぐ唯一のものだった。
だから、騒ぎを起こすことなく、いたって平和に、この結婚を受け入れようと思った。
わたしはまだ若い。父上のように経験もない。
わたしがむやみに戦を続けても、勝てるかわからなかった。
指揮官である父が死に、多くの兵の命を失い、軍も万全の体制ではない。
時機を待つ必要があった。
つまりこれは、ただの時間稼ぎにすぎない。
それなのにどうだ。
女を捨て、国のために国を導く主導者になることを決めた。
そのためならどんな切り札だって使うつもりでいた。
…好いた男などいない。
誰かひとりの男と人生を共にする、そんなこと今まで考えたこともなかった。
誰かと人生を共にするとしたら、わたしは迷わず戴輝を選ぶだろう。
生まれる前からずっと共にいた片割れだ。
わたしはあいつがいればそれだけでいい。
男女の情などわたしにはわからない。
ならば、別に政治のために好きでもない男と結婚したとしても構わない。
そう思っていたはずなのに、いざその時になると、わたしは彼を受け入れるのを拒んだ。
こんなみっともない下手な嘘までついて、わたしは彼を拒んでいる。
なにかを割り切れずにいる。
…所詮は、わたしも女なのか。
静かに反応を待っていると、なにかがおなかのあたりでうごめいているのを感じた。