帝は若宮をいつでもおそばに置かれました。
昼から弘徽殿においでになる時なども御簾の中までお入れになります。
若宮は聡明な御方で、皆に愛されて育ちました。
どんなに恐ろしい武士でも、若宮を見ると微笑まずにはいられないありさまでした。
それだけではありません。
七歳の時読書(ふみ)始めをさせたところ、若宮は与えられた書物をすらすらとお読みになりました。
あまりに賢くいらっしゃったので帝は末恐ろしいとさえ感じられたそうです。
学問以外でも琴や笛の才能もお持ちで、そのひとつひとつを挙げていたら大げさになりそうなほど、この若宮は比類ない才能をお持ちでした。
その頃高麗人が来朝していたのですが、その中に優れた人相見がいるとお聞きになった帝は、若宮を連れてこの者のもとに向かわれました。
若宮の素性を隠して会わせると、人相見は不思議そうに何度も首を傾げます。
そうして申すことには若宮の相はなんとも珍しく高貴なものであるそうなのです。