結局、その日一日待ってみたが・・・「客」は現れなかった。

・・・今は自分も含め、奥の部屋でくつろいでいた。
それなのに、聞こえる、何かを引きずるような音。
しかも、その音はだんだん大きくなっていて、近づいてきている。

部屋の前で、床がきしむ音がして、止まった。

佑都

・・・もしかして、お客さん?
もしお客さんなら、

怪奇、探偵事務所・・・ここ・・・?

やっぱり、お客さんだった。
そうだよな、幽霊に昼間に来いってのがまず無理だよな。

凍牙

佑都?今の・・・

佑都

お客さんだ。
ちょっと待ってくださいね。

・・・起こして、ごめんね

佑都

いやいや、こちらこそお待たせして申し訳ありません。客間に移動しましょうか。

ふすまを置けて客を確認すると、割と普通の人・・・いや、幽霊がそこに立っていた。・・・いや、立ってた、って表現はおかしいな。一応足はあるみたいだが、普通に透けてるし。引きずっていたような音がしたのは、この客が血でぬれていたから、だと思う。

立哉

すいません、こんな夜遅くに・・・

いえ、大丈夫ですよ。僕らみたいなのは普段この時間に動きますから。

立哉

お気遣い、ありがとうございます。
俺は、斉藤立哉と申します。

彩都

あっ・・・

立哉

?どうか、しましたか?

彩都

えっと、斉藤さん?あんまり、俺らみたいな、人ならざる者に、自分の名前を名乗るのはNGですよ?

凍牙

名前ってのは、かなり強力な言霊なんで・・・いや、俺らは名前知ったところで何もしませんけど・・・

えっと・・・とりあえず、これからは気を付けましょうねって話です!

立哉

ええ・・・初めて知った・・・。あ、じゃあ、もしかして、俺が殺されたのって、自分の名前言っちゃったからですか?

佑都

・・・すいません、まだ何の情報も聞いてないので、今は何とも。

立哉

あっ・・・そうですよね、すいません。実は・・・

さあ聞こうとしたとき、彩都がタオルを持ってきた。

彩都

悪いけどお客さん、まずはその赤いの拭いてくれる?

客はタオルを受け取り体を拭いた後、その当時のことを話し始めた。

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