すみません。
遅くなっちゃいました。

橘杏子

ごめんなさい。迷惑ばかり
かけてしまって・・・。

まだ髪も短くて黒髪だった頃。
そして一番、人間関係に悩まされていた時期。
このころの私は引っ込み思案で
感情を出すのが苦手で不愛想だった。


真面目キャラを装いながらも、
頭はそれほど良くないという残念な人間だ。

先輩は何も悪くありません
堂々としていてください!

橘杏子

ありがとう

その笑顔を分かってもらえる
といいんですけどねえ・・・

橘杏子

xx君だけにでも分かって
もらえるならそれでいいよ

それは、照れますね。
ありがとうございます

先輩、着きましたよぉ

顔を覗かせたのは私の嫌いな人であり
憎み、恨んでいる人物。

橘杏子

私、少しここに
いてもいいですか

先輩、体調悪いんですかあ
大丈夫ですかぁ?

橘杏子

ええ、ちょっと

こんな奴に心配されるなんて・・・。
本当は上辺だけなくせに

じゃあ、鍵
ちゃんと抜いてくださいね

橘杏子

うん・・・。
ありがとう

いい気味だわ、
こいつも・・・あいつも

聞こえてるっつーの。
心の中で舌打ちをしながら、
あの女が関わっているだと確信した。

こいつ、は恐らく私のことだろう
しかしあいつとは一体誰のことを指しているのか

それは、後輩の唯一慕ってくれる人物だった。

橘杏子

なんで気付けなかったんだろう
もし・・・
異変に気付いてたら

彼はいつも私のわずかな変化にも
気付いて声を掛けてくれた。

でも、私は自分のことに精一杯になってしまって
彼の変化に気付けなかった。


______正しくは、気付かぬふりをしていた。

橘杏子

なんで死んじゃったの。
私には死ぬなって言ったくせに
なんで・・・なんで!!

死んじゃうのよ

彼は自殺した。

私を置いて。最後の言葉も言えずに
ありがとうの言葉も言えずに。

橘杏子

っ・・・ううっ
ごめんなさい・・・

私のせいで彼は追いつめられる結果となった
彼を殺したも同然だ。

それ以来、年下と接するのが苦手で
年下になめられているような感覚や
私を責めるような冷たい視線を感じ
年下に接してはいけないという壁をつくった。

橘杏子

私は・・・

これ以上、私のせいで
私より未来のある可愛い後輩の
首を絞めるようなことはしたくないから。

そして関わることへの不信感と呆れを感じたから。
はっきり言えば逃げたのだ。

私はそれから彼の名前を
思い出せなくなってしまった。

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