アルベルトは傭兵に剣を向けている。
でも傭兵は全く動じることなく、
逆になぜか小さく鼻で笑った。
アルベルトは傭兵に剣を向けている。
でも傭兵は全く動じることなく、
逆になぜか小さく鼻で笑った。
邪魔をする気か?
当たり前だ!
よせ、アルベルト!
そいつの気配、ただ者じゃないぞ!
はぁあああぁっ!
座長の制止を無視し、
アルベルトは傭兵に向かって斬りかかる。
もしその一撃がヒットしたら、
重傷を負わせるどころか命さえ奪いかねない。
そんな本気の一撃だった。
ガキィイイイイィーン!
なっ!?
ふっ!
――一瞬の出来事だった。
激しい金属音とともに
アルベルトの剣が弾き飛ばされていた。
さらに傭兵はアルベルトの眼前に
自らの剣の切っ先を向けている。
何が起きたのか、私には分からない。
アルベルトやみんなも呆然としている。
傭兵以外では唯一、
フロストだけが真顔のまま。
そして真っ直ぐ2人を見据えている。
そんな素人の剣が
俺に通じるものか。
筋は悪くないがな……。
う……ぐ……。
負けを認めろ。
そうすれば命だけは助けてやる。
み、認めるものかっ!
ならばあの世へ送るだけだ!
傭兵は剣をわずかに退いた。
そのままアルベルトに向かって
突き出すつもりだ!
私は思わずそこから目を背ける――!
――待てっ!
フロスト……。
視線を戻すと、
フロストは威圧感のある瞳で
傭兵を睨んでいた。
ゾッとするような気迫――。
いつもの優しい雰囲気は消え失せている。
今度は僕が相手になろう。
ほぅ……。
少しはできそうだな?
お前よりな。
……生意気な。
約束しろ。
僕が勝ったら
潔くミリアのことを諦めろ。
良かろう。
その代わり、俺が勝ったら
その女はいただく。
あぁ、好きにするといい。
ちょっ!? 勝手に――
大丈夫。僕は負けないから。
あ……。
何なの、この気持ちッ!?
ドキドキが止まらない。
それに……なんか切ない……。
体の奥が熱くなってきて、少し息苦しい。
目の奥にフロストの笑顔が焼き付いたまま、
まだ離れない。
――っと!
馬車から降りたフロストは、
剣を抜いて傭兵と対峙した。
動きに無駄がなくて落ち着いている。
でもなんか闘志は燃え上がっている感じで
すごく頼りがいがある。
でもフロスト、
どうか無理だけはしないで……。
もし大怪我でもしたら、私は……。
次回へ続く!