あたし

……朝だ。



これほどはっきりと目が覚めたのは


いつぶりだろう。










アタシはベッドから出ると、



夢の中の決意を胸に階段を静かに降りる。









おねえちゃん

んー?

あたし

おはよう、おねえちゃん!

おねえちゃん

おはよ。

あたし

アタシ、今日学校休む。

おねえちゃん

……そう。珍しいね。
宣言して休むなんて。

あたし

いいでしょ!

おねえちゃん

まぁ、好きにすればいいさ。

あたし

そうする。

おねえちゃん

連絡は自分でしなよ。
適当な理由つけてさ。

あたし

…む。








そういえば考えてなかった。





なんて言おうか……。




あたし

家庭の事情で、でいいかな……。

はい、もしもし。

あたし

すみません、2年2組の佐藤です。

あたし

はい。
すみません。



はい。
はい。

あたし

……よし、と。




これで準備は万端。







ちょっとおねえちゃんの様子を



観察してみよう……。















潜入捜査








おねえちゃん

どした?

あたし

うっ…見つかった……。

あたし

えーっと…おねぇちゃん、朝ご飯食べた?

おねえちゃん

ん、バナナ食べた。

あたし

それで足りる?

おねえちゃん

大丈夫。
朝はあんまり食べれなくてねぇ。

あたし

そう……。
じゃあ、アタシ
朝ごはん食べてくるね。
















朝ごはんの片付けをした後、







書斎前で階段に座りながら、





おねえちゃんに変な動きがないか





様子をうかが……。

あたし

ひっ!

おねえちゃん

何やってんの?

あたし

え、いやー、ちょっと……。

あたし

お、おねえちゃんこそ、お仕事は?

おねえちゃん

トイレくらい
行ったっていいでしょ。
リツはどこぞの編集かい?

あたし

うっ……。




そう言って、おねえちゃんは





私の前を横切ってトイレに行った。



あたし

む!

あたし

これはチャン〜ス!




お姉ちゃんのいない間に、



書斎に何か手がかりがないか調べられる!




そう思った私は急いで書斎のドアを開ける。








書斎に入ったアタシは、周りを見渡す。




ぱっと見いつも通りの書斎。




大きく変わったことはない。



あたし

ん〜、いつも通りだなぁ……。

あたし

……ん?



一つだけ気になるとしたら



机に伏せられた写真立て。

おねえちゃん

リツ。

あたし
おねえちゃん

……なんて声出してんだい。

おねえちゃん

……ヒマなの?

あたし

うぐっ……

あたし

ヒマというかなんというか……

おねえちゃん

ヒマなら手伝ってよ。
とりあえず、消しゴムかけとベタ。







アタシは、なし崩し的に




おねえちゃんのヘルプをする事になった。








久しぶりにするおねえちゃんの手伝い。







実は結構好き。










小学校の頃はよく書斎に入り浸って



おねえちゃんに絵を教えてもらってた。






小学校5年くらいの時には



ベタや消しゴムかけの手伝いはもうやってた。









中学3年の頃、受験とか色々重なったのもあって、



それから手伝いをしなくなったけど……。






久しぶりにやるベタと消しゴムかけは、



精神が研ぎ澄まされる感じで、とてもいい。









一心不乱に作業をしていると、




いつの間にかお昼を過ぎていた。



あたし

ふー、つかれた。
もうこんな時間!

おねえちゃん

おつかれさん。
おかげさまでだいぶすすんだよ。

次の〆切は結構余裕だね。

あたし

おねえちゃん、お昼ご飯どうする?

おねえちゃん

冷凍した餃子あるんだろ?

あたし

あるにはあるけど……。






そう言えば、おねえちゃん



最近外出してないんじゃないかな…?




そう思ったアタシは

あたし

ねぇ、今日は違うものにしない?





おねえちゃんを外に連れ出したくなった。

あたし

一緒に買物行こうよ。
お昼ごはんのついでに夜ご飯の材料買おう!

おねえちゃん

んー?
……まあいいけど。

なんかアテはあるのかい?

あたし

そんなのは、商店街で一緒に悩めばいいのさ!

いくよ、おねえちゃん!










潜入捜査では



これといった成果を上げられなかったけど、



すごく久しぶりに二人で外出。











アタシはウキウキしていた。




















……おねえちゃんは、





どう感じているんだろう……。













つづく

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