橘杏子

またかよ・・・

毎日のようにつけられる日々に
慣れてきている自分はおかしいと思う。

でも、相手は何もしてこないし
きっかけもないわけだからそのうちに
相手も飽きるだろうという
心の余裕がこの時にはあった。

橘杏子

何のためにつけてるんだか

油断していたその時だった。

徐々に足音が大きくなっていく。
そして自分の方に近付いてくるのがわかる。

橘杏子

助けて!

辺りを見回しても誰もいない。
誰でもいいから命だけは・・・!

何者かに手を掴まれたかと思うと
そのままその人物は走り出した。

どれ位、走り続けただろう。
公園が見えてきてその人物は一目散に入っていく

神谷優

大丈夫ですか?

橘杏子

あなたは・・・

神谷優

困っているように見えたので

ただのムカつく奴かと思ったら
そうではないようだ

橘杏子

ありがとう

神谷優

結城かなって期待した?

橘杏子

はあ!?
あんな自己中
好きになるわけない!

つい言いすぎてしまった。
子供相手になんでこんなにも
必死になってしまっているのだろう。

橘杏子

今のはちょっと・・・

言いすぎた、と言おうとしたとき
その言葉に被せるようにこう言った。

神谷優

分かってますよ

橘杏子

そう・・・

神谷優

だったら、
いいですか?

橘杏子

何が?

神谷優

杏子さんを
頂いてもいいですか?

橘杏子

はあ?

神谷優

本気ですよ。

僕、杏子さんのこと
好きになっちゃいました。

橘杏子

う、うるさい・・・
どうせ嘘でしょ。

堂々と目を見て言われると
流石に照れる。恥ずかしい。

神谷優

だから、責任をとって
もらいたいんです。

橘杏子

責任?

神谷優

はい。好きにさせた責任です。
デートしてくれませんか?

橘杏子

なんで寄りにもよって
あんたと・・・

神谷優

じゃあ、結城だったらいいんですか?

橘杏子

そういうわけじゃない!

神谷優

だったら、デート
してくれますよね、杏子さん

橘杏子

ヴ・・・

神谷優

結城に負けたくないんで

橘杏子

あんた、何なの・・・

そんなこんなでストーカーから救った男と私は
デートをする羽目になってしまったようです

橘杏子

年下にまた、押されてる・・・

神谷優

案外チョロイもんだ

それぞれがそれぞれの思いを抱えながら。

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