病院を出た辺りで、フェイールが口を開いた。

フュイール

すみません。せっかく来ていただいたのに……

サジェス・エフォール

気にしてないよ。あれくらいの反応は予想できたさ

サジェス・エフォール

『笑わない少女』なんて言われてるだけあるね

エクリール

全く表情を変えない少女……か

フュイール

シャンスちゃんがやってきたのは、1週間ほど前です

肩を落としながら、フェイールは話し始める。

フュイール

搬送された時は意識がなくて、全身やけどを負っていましたけど、どれも軽いもので後遺症が残るものではありませんでした

エクリール

しかし、精神面で障害が出てしまった……

フュイール

障害というほどではありませんが

フュイール

ただ、他人を非常に警戒するようになってしまって。外との関りを拒絶しているというか……

サジェス・エフォール

なるほど、それでボクに白羽の矢が立ったわけかい

どういうことだ、とエクリールが聞くよりも早く、フェイールが大きく頷く。

フュイール

はい。あなた方が初めて魔法の合同研究で成功して、気球というものを初めて見たときに感動したんです。そして、シャンスちゃんの現状を見たときにサジェスさんの顔を思いついたんです

フュイール

頼むならこの人しかいないって。あなたなら、きっとシャンスちゃんの心を開けてくれるって

サジェス・エフォール

よしてくれよ。そんな大層な人間じゃないさ

サジェス・エフォール

とはいえ、先の依頼に比べれば明らかに面白そうだ。引き受けようじゃないか

フュイール

はい!ありがとうございます!

エクリール

……………………

バティール・ヴァルテュー

そう、受けることにしたのね

サジェス・エフォール

まぁ、片方は渋々だけどね

フェイールと別れた後、サジェスはまっすぐ学園長の部屋に向かった。
そして、軍とフェイールからの依頼両方引き受けることを伝えた。

バティール学院長はほっとしたようだ。
それについては、エクリールも同感だ。
最悪、自分が説得しなければならなかったからだ。

バティール・ヴァルテュー

分かったわ。じゃあカリキュラムの調整は任せておいて。何か必要なものがあれば言ってちょうだい

サジェス・エフォール

ありがとう、学園長!

バティール学院長が生徒に慕われている理由の一つに、理解力があげられる。
在学中ながら、外部から依頼を受けるほどの優秀な魔法使いが多い学園なため、最初に組まれた授業カリキュラム通りに授業を受けることができないことが往々にしてある。
それに即座に対応し、授業スケジュールを新たに作成する必要がある。
他の魔法学校ではそれが間に合わないため、外部からの仕事の依頼を断っているらしいが、バティール学院長はそのスケジュールの組み直しを簡単に、しかも生徒に過度な無理をしない程度に調整できる。

おかげで、この学園の生徒達は在学中から魔法の仕事を引き受けることができる。

サジェス・エフォール

そうだ、学園長。今から外出してもいいかな

エクリール

おい、もうすぐ夕方だぞ

バティール・ヴァルテュー

そうね。これから一気に暗くなるし、いくら貴女が発火魔法が使えるといっても……

バティール・ヴァルテュー

待って、もしかして彼女に会いに行くの?

サジェス・エフォール

ああ、そうだよ

バティール・ヴァルテュー

ならいいわ。でも、何かあったらちゃんと連絡するのよ

エクリール

……あの、学園長

エクリールが口を挟むも、バティール学院長は大丈夫よと手を振って見せた。

バティール・ヴァルテュー

あそこなら私も場所は知ってるし、万が一にもサジェスちゃんが襲われたりする心配はないわ。それが不安だったんでしょ、エクリール?

エクリール

……ええ、まぁ

そうはいっても、エクリールは全く何のことか分からなかった。
既に半月はサジェスの従者をやっているが、見当もつかない。

サジェス・エフォール

エクリールは、軍にボクが引き受けることを伝えに行ってきてよ

エクリール

…………しかし

サジェス・エフォール

大丈夫だよ。何も起きないし、下手なことはしないから

エクリール

…………分かった

本人がそこまで言うなら信じるしかあるまい。
そう自分に言い聞かせた。

しかし、監視対象を置いて別行動など、上は何と言うのか、エクリールはそれが最も気がかりだった。

To be continued...

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