橘杏子

本当にごめんなさい

坂田結城

他人に聞かれたくない事
くらい誰にだってある

その言葉が深く胸に刺さった。
彼の傷を抉るようなことをした。

坂田結城

・・・ごめん

こんな顔させるつもりじゃなかったのに。
謝らなくちゃいけないのは私の方だ。

坂田結城

早く準備しろよ

橘杏子

いつか必ず話します。
だから待ってもらえませんか

坂田結城

・・・待ってる

しょうがないからな。
急かしても意味なさそうだし

橘杏子

笑った・・・。

坂田結城

あ?でも、それまで
ちゃんと働いてもらわないとな

橘杏子

しょうがないですが
そういうことになりますね

坂田結城

へえ、いてくれるんだ?

橘杏子

しょうがないです

坂田結城

そっか。

橘杏子

照れてる・・・

坂田結城

うっせえ。

お手伝いさん

杏子様、準備を
お願い致します。

橘杏子

準備?

坂田結城

出かけるって言ったろ?
その格好で行く気か?

橘杏子

着ろっつったのは
お前だろ・・・

お手伝いさん

ではこちらへ

連れてこさせられたのは
可愛らしい女の人の好きそうなお部屋だ。

少し、気になるのは埃っぽいところだろうか。

お手伝いさん

ご察しの通り
ここは奥様のお部屋です。

お手伝いさん

ここでいつも
着替えさせていただいております

橘杏子

そうなんですか

渡されたのは私の好きな雰囲気の服だった。

お手伝いさん

お気に召しませんでしたか?

橘杏子

いや・・・
まさに好きな感じですよ

お手伝いさんだけあって
洞察力が人並みではない。

お手伝いさん

購入したのは
私ではございませんよ

橘杏子

そうなんですか

お手伝いさん

では早速
取り掛かります

橘杏子

え!ちょっと!?

橘杏子

なんで黒髪なんですか

坂田結城

金髪やめたいんじゃ
なかった?

橘杏子

なんで知ってるんですか

坂田結城

わざわざ、黒髪のウィッグ
被ってまで、週末
出かけるんだろ?

そう、私の唯一の楽しみが
黒髪のウィッグを被って高校生からの古い友人と
買い物をすることである。

橘杏子

だから、なんで・・・
あ・・・(察し)

お手伝いさん

すみません

坂田結城

金髪ウィッグ
やるから我慢しろ

橘杏子

しょうがないから
もらいます・・・

坂田結城

童顔・・・

橘杏子

あ?

お手伝いさん

着きましたよ

橘杏子

ペットショップですか?

坂田結城

犬飼おうと思って

橘杏子

可愛い・・・

ワン!

坂田結城

確かに。じゃあ、
この子にしようか

橘杏子

え、飼うんですか!?

坂田結城

気に入らなかった?

橘杏子

確かに可愛いですけど・・・

坂田結城

犬欲しかったからさ
気に入った子が
いてよかったよ

橘杏子

お金は私が出します

坂田結城

いいって

橘杏子

そういうわけには
いきません!!

坂田結城

頑固・・・

橘杏子

あ?

坂田結城

大人しく俺の言うこと
聞いてればいいんだよ

橘杏子

それとこれは
違う気がしますけど
よろしくお願いします。

坂田結城

素直でよろしい

橘杏子

大人を
舐めないでください

お手伝いさん

早く行きますよ

なんだかんだでお世話になっているのは
私の方かもしれない。
でも・・・こんな日々も悪くない。

橘杏子

なんか押されて
ばっかりじゃん・・・

坂田結城

どうしたの?

橘杏子

なんにもありません

年下にこんなに気を遣われて
空気に流されているなんてなんか不思議な気持ちだ

神谷優

あれは・・・
結城と、女?

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