黒板にはアルファベットが並んでおり、
いつから使われているかわからない、
年季の入ったCDコンポからは、
流暢な英会話が再生されている。
世界の共通言語、英語の時間。
僕の斜め前の席の女子、沙鳥が、
自分は英語が得意であるのをいいことに、
授業そっちのけで、
僕に世間話をしかけがちな時間だ。
声を出さない世間話。
僕と沙鳥は、
頭の中だけで意志の疎通ができる、
いわゆるテレパスと呼ばれる超能力者なのだ。
斜め後ろの席にいる僕と、
堂々と私語はできないから、
必然的にテレパシーを介した会話になる。
まじめに授業を受けたい僕としては、
しょっちゅう話しかけれられては、大変困る。
ところが、今日の英語は珍しく、
沙鳥は僕に呼びかけてこなかった。