赤髪男を夜遅くまで待っていた日のお昼。
いつも通りの服の袖に手を通しつつ、
私は静かに考えていた。
最初は受け入れられなかった状況が
今はすんなりと受け入れ、普通に
仕事をしていると思うと慣れは怖いと感じる。
慣れって怖い・・・
赤髪男を夜遅くまで待っていた日のお昼。
いつも通りの服の袖に手を通しつつ、
私は静かに考えていた。
最初は受け入れられなかった状況が
今はすんなりと受け入れ、普通に
仕事をしていると思うと慣れは怖いと感じる。
こんなところあるんだ。
社長はこんなところで団らんをしたのだろうか。
社長は奥さんを亡くしてから、
より一層仕事に励んでいたし・・・。
でもテラスにはカビや汚れ、勿論コケなども
一切なく、きっとお手伝いさんたちが
隅々まで掃除をしているからだろう。
そのせいか生活感を感じなくて
さみしい感じがするのか。
だから赤髪男は“帰れ”と
私に言ったとき、悲しい顔したのか。
なんだ、可愛いところも
あるじゃん・・・。
それは逆に“傍にいてほしい”
という気持ちの表れだと感じる。
きっと彼は自分の気持ちを悟られるのが怖い。
人間不信とは違うけれど・・・
彼は照れ屋なのだ。
素直になれない。それだけのことだ。
それなら、私が彼の世界を広げればいい。
すいません。
では失礼させていただきます
あ、ど~も~
服を着ることに抵抗は覚えなかったのか、
そんな疑問を胸に抱くものの、
無論、直接聞くわけにもいかない。
しかし、視線に気付いたのか
女の人は私の方に近寄ってきた。
何かご用件でも
おありでしょうか?
あ、あの・・・
服装について抵抗は
なかったんですか?
これが私の仕事ですし、
できることであれば致します。
いくら仕事とはいえ、同情する。
でもこのように信念を貫ける女性は
同じ同性として感心するし尊敬する。
因みに
誰に頼まれたんですか?
ご主人に。
やっぱり、社長か・・・
はい、でも勿論
始めは驚きました。けど
けど?
これがこの家族の在り方
だと思うので。
在り方・・・
なんか胸のつっかえが取れた気がする。
家族の在り方がこのフリフリの衣装とは言いにくい
けれど、こうして女性を呼んでいるのは
ただ単に女好きっていうのだけじゃなくて
お母さんの代わりになってほしいんじゃないかなって
では、私はこれで
ありがとうございます
どうせなら、素直な子になってほしい。
それで人生を無駄にしてほしくない。
世界が狭いなら、私が広げればいい。
だから、私がお母さん代わりになってあげる。
社長と結婚するっていう
意味じゃないからね?!
随分遅かったね・・・?
何をしていたか
説明してもらえるかな?
なんでそんな怒ってるの?
当たり前です!
今何時だと思ってるんですか!
それより、
帰らなくてよかったの?
終電もうないけど?
え、嘘!?
時計を見ると普通に終電の時間を過ぎていた。
お母さんになると決めたものの
大事なことを忘れていた。
それならさ、泊まってく?
帰らせていただきます
悪いけど、タクシーは
呼ばないからな。
そこら辺の漫画喫茶で
一夜を過ごしますよ。
命令。ここに泊まれ
なんだか、子供が甘えているようで
了承せざるを得なかった。
俺様の癖に上から目線の年下男だけど
素直になれない不器用なだけだと思うと
不思議とイライラも感じなかった。
なに笑ってる?
可愛くて仕方がないと思った。
だから、ほんの少しだけこの仕事を
任されてよかったと感じた瞬間だった。
そして年下への不安感が少しだけなくなったと思う。
ううん、何にも!
なんだ、普通に笑えるんだ
へ?
なんにも。